第1期対談第9回 新たなマーケットも?イールドマネジメントとは

2015.10.1

業界展望

admin

『イールドマネジメント(レベニューマネジメント)』という概念をご存知だろうか。「今後は美容業界もイールドマネジメントが一般化されるのでは」と予測するのは、美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏だ。その背景には、“スキマ時間を活用したい”という消費者の意識があるという。美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。

美容サロンのネット予約が当たり前の感覚に
美容業界で進む『イールドマネジメント』

花上:最近、美容室やネイルサロンなどで「平日割引」を実施するお店が多くなってきました。どんな背景があるのでしょうか。

野嶋:『イールドマネジメント(レベニューマネジメント)』という考え方をご存知でしょうか。航空やホテル、レンタカーなどの業界ではすでに一般化されている概念です。これらの業界は、サロンと同じような“イスビジネス”。供給できる量に限りがあり、在庫を持ち越すことができない。そして回転率が売上げを左右するという業種です。例えばエアラインなどは、「早割」「直前割」などの割引があります。空席を出すぐらいなら、1円でもいいから客を乗せたいという考えの現れですね。この概念が美容業界にも導入されつつあるのです。「平日割引」はあくまでその一端に過ぎません。

花上:ネット予約がそれに拍車をかけているように思います。

野嶋:その通りですね。ネット予約が広まったことにより、サロン側が常に空き時間を把握できるようになりました。空き時間は、イコール、在庫です。この在庫を効果的に売ろうという考えが広まっています。

花上:消費者側としても、行きたいサロンの空き時間がタイムリーに確認できるというのはとても便利だなと感じます。

野嶋:最近の消費者には、「貴重な休日の時間を美容に割くのはもったいない」という意識があるようです。これまでは「ゆったり」「まったり」「ゆっくり」というのがよく使われるキャッチフレーズでしたが、「すぐに」「手早く」がこれからのキーワード。うまく時間のやりくりをしたい。空き時間がもったいない。だったら、この時間を使ってネイルをチェンジしたい、やらなきゃいけないことをパッと終わらせたい、そんな感覚ですね。

花上:実際にネット予約は増えているのでしょうか。

野嶋:エステティックサロンのネット予約を経験したことがある人は、実に3割以上というデータがあります。ネット予約は普遍的な手段になりつつあると思います。クチコミを参考にする人も多いようですね。

効率的に空席を埋めるだけでなく
新たなマーケットの開拓も

花上:イールドマネジメント化が進むと、どのようなことが起きるのでしょうか。

野嶋:空き時間がこれまで以上に有効活用できるようになると思います。他に考えられるのは、ナイトマーケットの拡大ですね。特にこれから外国人観光客が増えると、ナイトマーケットはもっと広がりをみせると思います。イスの空いている夜間の時間帯にお客を呼び込めるのは、サロン側にとっても利益が大きいでしょう。

花上:確かに、旅先で夜にマッサージをしてもらうと気分がいいですね。髪を切るのは少し勇気が要りますが、スパ、エステであれば気軽に利用できます。

野嶋:ホテル業界をみると、デイユースプランなどを打ち出している宿泊施設も多い。単に空席を効率的に埋めるだけでなく、新たなマーケットを発掘するきっかけになるかもしれません。

花上:昔は飛行機のアップグレードも多かったのですが、最近はあまりないですね。

野嶋:ただ、VIP顧客を優先的にアップグレードさせるというのは、イールドマネジメントの一環なのです。美容サロンでも、形を変えてこのサービスを導入してもいいかもしれません。

花上:都心部と地方では、多少事情は異なりそうです。

野嶋:“スマホでさっとスキマ時間を活用する”というのは、基本的には都会の考え方ですね。ただ、昔からのリピーターに支えられているサロンの中には、新規顧客対策に悩んでいるところも多い。空き時間を使って、若い人やこれまでサロンを使わなかった層へのアプローチを考えてもいいのではないでしょうか。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2015年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

 

連載記事
執筆者:admin

↑