第1期対談第17回 ご贔屓さまによる「クチコミ紹介率=リファーラル率」向上を目指す

2016.06.1

業界展望

admin

サロンの宣伝のために広告を出しているところも多いはず。しかし、どれほど顧客獲得につながったか計測したことはあるだろうか。どんなメデイアより、「ご贔屓さま」のクチコミが何よりも説得力をもち、効果的だと美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は言う。クチコミ紹介率=リファーラル率UPについて、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。

友人を紹介してくれる“ご贔屓様さま”
クチコミ紹介率「リファーラル率」を重視せよ

野嶋 今回は「リファーラル率」についてお話しましょう。花上さんはこの言葉を聞いたことがありますか?

花上 ビジネスにおける「紹介」という意味でしょうか。

野嶋 その通り。美容業界においては、クチコミ紹介率、宣伝率のことを指します。 “生涯顧客を作りたい”というのは、どのサロンも望んでいるはず。しかし実際にはとても難しい。そこで、自サロンをご友人に紹介してくれるお客さまがいるかが鍵になってきます。

花上 いわゆる優良顧客であり、“ご贔屓さま”ですね。

野嶋 「贔屓」という漢字は、「貝=お金」を持って「戸を開けて訪れる人」と書きます。つまりリファーラル率とは、お金を持ってやってくるサロンの宣伝部長と解釈できるのです。リファーラル率は、売上げの上位5%を占めるお客さまと言われています。

花上 サロンの価値を理解し、サロンにお金を投じて下さるお客さまのことですね。

野嶋 この方々はサロンの宣伝部長ですから、どんなメディア(マスコミ)よりも大事なのです。その目安が「クチコミ宣伝率=リファーラル率」です。さらに、ご贔屓さまが紹介してくれたご友人は新たな優良顧客となることが多いのです。

花上 単発利用はもちろんのこと、長期契約が主のサロンにおいても重要な考え方ですね。

野嶋 初回、2回目、3回目と仮定すると、初回、つまり新規顧客の獲得ばかりを重視すると消耗戦になるということは、これまでも申し上げてきました。人口減少時代ですから、新規客はもう期待できません。ご贔屓さまが紹介してくれた新たなお客さまを2回目、3回目の来店とつなげて優良顧客化すべき、というのが私の考えです。

花上 ご贔屓さまが推薦する言葉は、どんな宣伝よりも説得力があると思います。サロンの特長を的確に捉えていることも多いですよね。もっと重視すべきだと思います。

野嶋 ただ、注意しないとネットワークビジネスになってしまいますので、手法や数字にとらわれないようにしなければなりませんね。自然に推薦してくれる。これがベストです。

リファーラル率を上げるためには
真の“経営”が必要になる

野嶋 サロンの宣伝のために広告を出しているところも多いと思います。しかし、どれほど顧客化につながったのかを計算したことはあるでしょうか。種を蒔いても戻ってこないというのが実状ではないでしょうか。そこを考えると、ご友人を紹介してくれる方がどれほどありがたいかがわかるはず。大事にすべきご贔屓さまをしっかりと見極めるべきなのです。

花上 ご贔屓さまであり、サロンの“ファン”とも呼べる方々ですね。

野嶋 ホテル業界ではリファーラル率について、研究と実践が進んでいます。お客さまをファンにするための工夫が随所に凝らされており、さらに接客するスタッフに大きな裁量権を持たせているケースも多いのです。「あのホテルは良かった」とクチコミで広がるのを戦略的に考えているのです。

花上 クチコミというと、クチコミサイトや予約サイトの書き込みを連想する方も多いかもしれません。

野嶋 クチコミサイトはただの「システム」。とても人工的でケミカルなものです。本来のクチコミはもっと自然発生的なもので、オーガニック(有機的)なもののはず。自然なクチコミは、広告の何倍も価値があります。

花上 リファーラル率をどう上げるか、戦略的に捉えなければならないけれど、人工的になってはいけない。この辺りのさじ加減が難しいかもしれませんね。

野嶋 エステティックサロンで、VIPのお客さまだけを集める「ファンミーティング」を開催しているサロンがあると思いますが、これは良い仕組みだと思います。また、アニバーサリーに一言添えるなどの工夫もいいですね。リファーラル率を上げるためには、顧客管理、スタッフへの教育、仕組みづくり、マインドの共有も必要になってきます。

花上 つまりは、真の「経営」を目指すべきということですね。新たな言葉が出ることで、これまでのやり方を見直すきっかけとなると思います。本日はありがとうございました。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2016年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

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