第1期対談第21回 新卒社員マネジメント考①

2016.10.1

業界展望

admin

「ゆとり世代」といわれる現代の若者。新入社員のマネジメントに頭を悩ませている組織も多いだろう。前向きに仕事に取り組んでもらうためには、夢や理想像を語り内発的な動機を高めることがやはり大事であると、美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は言う。美容経済新聞編集長 花上哲太郎が詳しくインタビューを行った。

夢や理想を熱く語ることこそ
いま求められているマネジメント

野嶋 今回は新卒で入社した社員のマネジメントについて考えてみましょう。

花上 いい人材が採りづらい、入社しても定着しないというのが共通した悩みですね。

野嶋 ミドルマネジメントの層と新入社員の層とのギャップがあるように思います。部下やメンバーに対する接し方において、指導が表面的であるように見受けられるのです。

花上 例えばどのようなケースがあるのでしょうか。

野嶋 ある社員が「遅刻が多い」となったとしましょう。罰則規定などルールを作って対応するところが大半なのですが、効き目がない。そこでよく話を聞いてみると、「そもそも会社に行きたくない」と言い出す。こうした気持ちを無視して罰則を作っても意味があまりないのです。仕事のやりがいやビジョン、目指すところなどを話すことができていません。

花上 昔は居酒屋で夢を熱っぽく語るというのが定番でした。

野嶋 一時はそれが廃れ、もっとスマートにマネジメントをするようになったのですが、最近は昔に戻って、“ビジョンや夢を語らないといけないのでは”という流れになっています。マネジメントにおいては戦略論にだけ長けていてもダメで、新入社員が聞きたいのは、やはり物語だったりするのです。

花上 意外ですが、うなずけます。

野嶋 一口に「動機(モチベーション)」といっても二通りあります。一つ目は外発的な動機で、ボーナスなどのインセンティブや罰則規定などのルールがあるから「がんばろう」と思うもの。二つ目が内発的な動機で、“自分ならできる”という有能感や、自ら決められるという自己決定権、仲間やチームのために「がんばろう」と思うもの。マネジメントがうまくいっていないところは、内発的な動機を高める取り組みが弱いと思います。

花上 ルールだけではモチベーションが上がらない。

野嶋 熱さ、夢、共感、チームでがんばろうという気持ち……ありたい姿、理想とする姿を語っていかないと、今の組織はうまくいかないのです。

花上 朝礼も組織の精神を意識づけるいい機会ですね。

野嶋 社訓を唱えるところがありますが、意味があるのです。なぜ意味があるのか? それはそこに共感するから。だから、感情を込めずに社訓を唱えても意味がないし、会議だって意義が感じられなければ無意味です。

“意味や意義、答えだけを知りたい”
若者にも注意すべき

花上 なぜこうした風潮になってきているのでしょう。

野嶋 この連載でも何度か話していますが、今の世代は「とにかくやれ」ではなく、“なぜこれをやるのか?”を考えるように教育されています。考える力や発信する力があるゆえに、「どう思う?」という問いかけ、歩み寄りが求められているように思います。また一方で、意味、意義、答えを求めるのも若い世代の特徴で、だから理想を語るのは効果的なのです。繰り返し考える機会を作らなければ、組織は前に進みません。

花上 仕事の意味を知りたい、価値を知りたい、全体像を知りたいというお話は前にも伺いました。

野嶋  ただ、気をつけなければいけないのが。想定外の経験があって得られたものというものが多いのを理解してくれないというところです。仕事は想定内のことよりも、想定外のことが多いもの。いまの若者の中には、想定内の範囲でことを収めたい、だからあらかじめ答えを教えて欲しい、無駄なことはしたくない、ゴールに対して辻褄合わせをしたいという人もいます。そのあたりうまく手綱を取れればいいのですが、難しいところですね。

花上 マネジメント層の考え方も、冒険をしないというか、保守的になってきている気がします。

野嶋  経済が右肩上がりに成長している世界ではないので、チャンスが限られているし、失敗しても次があるとは限らない。だから今は若者に仕事を任せないように思います。ただ、これでは内発的な動機が高まりません。やや理屈っぽくて立ち止まる傾向のある若者を、上手に背中を押してあげられることができるといいですね。

花上 スタッフにいかに本気を出してもらえるか、日々悩んでいることにヒントをいただけたと感じました。本日はありがとうございました。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2016年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

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