第1期対談第24回 人生100年!? 「健康寿命」とキャリアを再考する

2017.01.1

業界展望

admin

寿命、健康寿命とも年々長くなっている現代。個人のキャリアのあり方についても考え直さなければならないと、美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は指摘する。専門職、特に美容師やエステティシャンの働き方はどうなるのか、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。

伸び続ける寿命と健康寿命の中で
自分のキャリアを見直すべき

野嶋 今回は寿命とキャリアについて考えてみましょう。医学の発達により、日本は長寿社会に直面しつつあるといえます。“100歳までをいかに生きるか”という書籍が増えていますが、ロングライフを前提にして人生やキャリアを考え直さなければならない時期にあるのではないでしょうか。

花上 ただ、100歳までを健康に生きることができるかは別問題です。

野嶋 そうですね、「健康寿命」という言葉がありますが、これは平均寿命よりもマイナス10〜12年ぐらいと考えてよさそうです。寿命の延伸ではなく、健康な状態をいかに長く続けるか。これを考えながら、ロングライフと自分のキャリア、自分のビジネスのあり方についても考え直す必要がありそうです。

花上 美容師やエステティシャンにとってはどうでしょうか。

野嶋 これまでは現場で技術を磨いて、いずれは独立、経営者へというのが決まりごとのようになっていました。しかし、専門職のキャリアも変化する時期にきていると思います。例えば、自分の技術を教えたり、販売に力を入れたり、地域のコミュニテイを活用したり……。幅はもっと広がってくると思います。

花上 定年以降の雇用の考え方が課題ですね。リタイアした方をいかに活用するか、特にビジネスマンは定年後にどうキャリアを生かすかという議論がこれまであまりされてこなかったので、これから本腰を入れて社会全体で考えなければならないでしょうね。

野嶋 その点でいうと、専門職の方はどこでも生かすことができる「ポータブルスキル」を持っているのですから、有利だということができるでしょうね。たとえば、エステティックと福祉との相性もよさそうです。

花上 定年後も社会から必要とされるというのは、働く人にとっても嬉しいと思います。

野嶋 最近はAI(人工知能)により“この仕事はなくなるのでは”という議論が盛んですが、それでも人にしかできない仕事がある。例えば美容師、エステティシャン、クリエイター、チームリーダー……高い技術と知識、スキルが必要だからですね。

個人事業主、副業OK……
これからの働き方やキャリア形成にはプラスに

花上 それでも、美容師やエステティシャンは就職後の定着率が低く、他の業界に転職してしまうケースが多々あります。

野嶋  専門性を高めた後のキャリアの可能性を提示しなければならないのではないでしょうか。「働き方改革」がしきりに叫ばれていますが、長時間労働の原因となっていた練習時間などをどのように捉え直すのか、業界全体の課題も多そうです。

花上 練習時間を残業時間に含めるのか否か、賛否両論ありそうですね。

野嶋  美容師やエステティシャンを例にとると、専門職ですから当然ながら練習をしなければならない。でも「練習してほしい」と言うとスタッフはプレッシャーを感じて辞めてしまうし、法的にも問題がありそうだし、と経営者も尻込みしてしまう状況です。これは教育力が不足しているからではないでしょうか。短期間で技術を高めるノウハウは必ずありますし、しっかり技術を身につけてもらい、一人前としてデビューするまでの時間を短くしてあげればいいのではないでしょうか。早く現場に立ってもらい、戦力として生産性を高めてもらえればいいはずです。この連載でもお話してきたように、ナレッジ化やTTP(徹底的にパクる)などをもっと進めてほしいと思っています。

花上 非正規雇用についてはどうでしょうか。

野嶋  個人事業主、インディペンデント・コントラクターは増えていると思います。自分たちの会社の人員だけではなく、社外の才能も活用すべきという流れは、国内外問わずあると思います。

花上 正社員についても副業が可能になる会社も多いようですが、美容業界についてはいかがでしょう。

野嶋  こちらも課題は多いのですが、本業とよい形でリンケージできれば、個人にとっても企業にとっても、社会にとってもプラスになると感じています。長く働くために、会社のあり方や個人の生き方はどんどん変化していくはずですが、副業に関してはこの時流に合っているといえるのではないでしょうか。

花上 才能のある方に長く働いてもらい、社会に貢献していただくために、経営者としても考えなければならないことが多そうです。本日はありがとうございました。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2017年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

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