疾病保有者に運動を~日本規格協会が健康マネジメントを標準化 

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2013.10.22

編集部

一般財団法人日本規格協会(東京都港区赤坂)は、生活習慣に起因する疾病保有者を主な対象に、日常生活にフィットネスなど運動を取り入れるサービスを提供する「健康マネジメント標準化コンソーシアム」の代表団体としてプログラムを展開中だ。

同コンソーシアムは、(一般社)日本総合健診医学会、(公社)スポーツ健康産業団体、株式会社コスモプランを参加団体とし、(公財)健康・体力づくり事業財団、(一般社)日本フィットネス産業協会、(公社)日本フィットネス協会、(NPO)日本健康運動指導士会を外部協力団体として組織されている。

「健康マネジメント標準化コンソーシアム」は、経済産業省の平成25年度委託事業に採択され、事業は今年で4年目の実証段階に入った。国民医療費が国家予算の三分の一を超える37兆円にも膨らんでおり、医療・介護保険の外側の分野で疾病の予防、改善につながるサービス産業を振興することによって国民の健康を維持し、結果的に医療費の抑制につなげようというのが同省の考えである。健康分野をこれからの成長産業の大きな柱にしていくという狙いもある。

一方、フィットネスはこれまで健常者が相手で疾病保有者や高齢者向けではない、というイメージ強かった。そこでこれらの人々にも「日常生活の中で運動を楽しんでもらおう」と、医師やフィットネス事業者、健康運動指導士、利用者らと検討を進め、「医療連携プロセス標準モデル」を策定した。このプロセス標準モデルは、質的に安心できるサービスを提供するために、医療機関とサービス提供事業者の役割分担や標準の書式などを定めている。この中では、フィットネスだけでなく農業体験やゴルフ、観光(徒歩)など、趣味に合わせた個人の目線で運動を幅広くとらえた。フィットネスでの鍛錬というより「アクティビティ(行動)」という考えである。

疾病保有者は医師から推奨する運動や注意事項のアドバイスを受け、専門知識を持った健康運動指導士などがその情報に基づいて安全で効果的、しかも持続できるメニューを提案し、サービス事業者の下でアクティビティを行い、再び医師に報告する。医師、サービス事業者、健康運動指導士らの役割と責任のモデルを標準化し、全国どこでも利用者が安心して利用できるようにしたわけである。

4年目の今年は10月から来年1月まで、沖縄県那覇市周辺と静岡県沼津市で計60人程を対象に実証段階に入っている。生活習慣病による肥満者や手足腰の運動器系の疾病保有者が対象で、最終的に事業報告書を作成、経済産業省に提出される。

 

【解説】
安全・効果・継続が運動の三本柱
医療費削減と周辺サービスの産業振興が狙い

糖尿病を中心に、生活習慣病の疾病保有者は医師に運動や食事の指導を受けることが多いが、入院時以外で、個人でその指導を実行するのはなかなか困難である。「早歩きも織り交ぜながら1日当たり8,500~9,000歩程度を歩けば効果的」と言われるが、持続できないのが現実である。日本の糖尿病患者は1,067万人(2011年統計)で、中国の9,000万人を筆頭に世界第6位の糖尿病大国である。しかも重症化して人工透析をする糖尿病患者は日本で30万人を超えた。国民医療費が37兆円にもなった原因の一つは、生活習慣病患者の増大と症状の悪化である。

そこで疾病の予防、早期の対処、再発の防止によってQOL(生活の質)を保つために、健康マネジメントという考え方が必要になる。医療関係団体やフィットネス関係団体と日本規格協会およびコスモプランで構成される「医療連携プロセス標準モデル策定」コンソーシアムが構築したモデルでは、疾病保有者を囲んで医師、健康運動指導士、フィットネス事業者らが連携して、その人に合った運動メニューを作成・実施し成果を確認する。それぞれの役割連携と責任を標準化し、同じ質のサービスが受けられることで疾病保有者に安心してもらうことを目指す。何らかの健康リスクを抱えている人を対象としているので、医師の「運動指示書」の内容は重要である。

メニューの柱は三つ。まず安全性である。医師の診断情報に基づき、病状を悪化させない負荷の運動にすることが必要だ。場合によっては医師の下で運動負荷試験もする。第二は効果性だ。医学的に見て効果が出るように、運動の量と期間を定め、そのデータを確認する必要がある。第三は継続性。三日坊主ではダメで、お客さん目線で、その人の趣味に合った、長続きするメニューを追求することだ。

医療機関のお墨付きをもらいながら、フィットネスなどのサービス提供により、医療費や介護費の抑制と、新産業としての競争力強化が両立できると経済産業省は考えている。

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