「糖尿病の遠ざけ方、付き合い方」を知ろう、東大・植木准教授講演

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2013.10.31

編集部

日本の糖尿病人口は1,067万人以上(2011年)に達し、毎年16,000人が重症化して人工透析し、合併症の網膜症で毎年なんと3,000人が失明している。世界6位の日本人の糖尿病はまさに国民病であり、国の医療費が膨大化する要因ともなっている。

東大大学院医学系研究科で糖尿病・代謝内科の准教授植木浩二郎氏は10月17日、都内で開かれた第28回東大医師会公開講座で「糖尿病の遠ざけ方、付き合い方」をテーマに講演した。

膵臓から出て来るインスリンは、血液の中の糖を除去して肝臓や筋肉でエネルギーとして使ったり、蓄えたりすることで血糖値を一定に保っている。このインスリンの分泌が悪くなると血糖値が慢性的に上昇する。短期症状としては、尿の回数の増加、夜間頻尿、脱水症状、口が渇き、水分が欲しくなる。症状が悪化すれば昏睡状態にもなる。長期的に見ると、太い血管の障害で脳梗塞や心筋梗塞も起きる。細い血管の障害では三大合併症と言われる神経症(足の裏がしびれる)、腎症(放置すると人工透析に)、網膜症(失明の恐れ)が発症する。

糖尿病患者が激増しているのは、初期には自覚症状がないことが大きな原因である。健常者は空腹時の血糖値は100mg未満で食後もあまり上昇しない。糖尿病の疑いが濃い人は126mg以上、食後200mg以上の血糖値となる。食後300~400mg以上の人は明らかに糖尿病である。

糖尿病の重要な決め手に「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)」がある。過去1、2カ月間の血糖値の平均を反映する数値で、これが6.2未満までは正常値で6.5以上は糖尿病の疑いが濃い。健康診断や人間ドックで必ずこの数値を測ってもらう必要がある。

なぜ、インスリンの効きが悪くなる糖尿病になるのか。肥満、筋肉量の低下、肝機能の悪化、薬物の副作用のほかに、両親からの遺伝子にある危険因子を受け継いでいることも大きな原因だ。最も一般的な肥満防止対策として、肥満の判定基準(BMI)の数値が22を理想とし、25以上は肥満と規定されている。この数字は体重(kg)を身長(メートル単位)の二乗で割ると簡単にわかる。欧米人はインスリンの分泌が東アジア人より良いので30以上が肥満とされる。

植木准教授は「糖尿病の遠ざけ方」として5つを挙げた。(1)両親や兄弟に糖尿病の人がいるか確認する(2)健診を必ず受けて自分の空腹血糖値とHbA1cの値を知ること(3)自分のBMIを知り、22を目指す(4)内臓脂肪の評価としてへそ回りが男性85cm未満、女性90cm未満とする(5)体重3キロ、ウエスト3cmの「33減量運動」で数値は劇的に改善される―という。

では、糖尿病になってしまったらどう付き合えばよいのか。まずは合併症の発症を抑えねばならない。年齢、罹病期間、臓器障害、サポート体制など個別に考えねばならないが、HbA1c「6%未満」を目標とし、食事療法、運動療法、薬物療法の三つを主治医と栄養士と相談しながら決めることが重要だ。特に大切なのは食事で、自分の必要カロリーを計算し、野菜など植物繊維から食べ始めてインスリンの分泌を促し、次にタンパク質と、糖値が上がるパンやご飯の炭水化物、最後に果物を採るのがよい順番という。運動による血糖コントロールでは、ウォーキングやストレッチなどの有酸素運動は食後の高血糖の上昇を抑制するので効果的だ。

植木准教授は、「糖尿病は残念ながら現在の医学では治らない。将来的には腸内細菌叢を変化させることで肥満や糖尿病、がんの予防ができるようになるかもしれない。今は、一病息災で糖尿病を自分の生活の一部として生きていくしかない」と語った。

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