男性型脱毛症1,260万人、毛髪再生医療に期待高まる(下)

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2013.12.27

編集部

毛髪再生の治療が始まっている。クリニック、化粧品メーカー、ベンチャー企業など各社がヒト由来の組織・細胞を移植して自己再生能力で毛髪を再生する技術開発に取り込んでいる。

桜花クリニック(東京都新宿区)は、脱毛症患者に対しハーグ療法と名付けた毛髪再生治療(自由診療)を行なっている。ハーグ療法は、健康な成人女性から採取した脂肪から幹細胞だけを取り出して培養し、分泌されたヒト由来成分「グロスファクター」(成長因子=たん白質(AAPE))とビタミンなどの栄養成分を調合した薬剤(ハーグカクテル)を脱毛部位に注入(注射)することで、毛髪を再生させる治療法。同クリニック院長の福岡大太朗氏が開発した。

AAPEの中には、毛包成長期の誘発効果のある「FGF-7」(発毛促進因子)や毛髪再生を促進させる多機能シグナル分子「VEGF」など150種類を超えるサイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質)が含まれている。この成長因子を成長が止まった髪の毛母細胞を刺激して細胞の分裂を活性化し合わせて髪に必要な栄養を送りだす部分を刺激することで、成長段階の育毛を活発にする仕組み。同クリニックでは「施術を受けた患者の内、94.4%の患者が4回以内の治療で育毛効果が実感できた」として同療法に関心を持つ全国のクリニックに普及・啓蒙を図っている。

自家細胞移植技術による毛髪再生で先進技術を誇るのがカナダのレプリセル社。独自開発の細胞培養プロセスで、患者の頭皮から採取した毛根鞘細胞を培養した後、患者の脱毛部位に注入する自家細胞移植技術(開発コードRCH-01)に特異技術を持つ。また、特許の使用権を供与し自前では事業化しない点も特徴。

同社は、2013年5月に資生堂に対して自家細胞移植技術のライセンスを供与(独占使用権)した。技術導入契約を踏まえ現在、両社間で細胞の採取法や培養方法、製造技術などについて協議を始めている。

東大発ベンチャーのバイオマスター(横浜市)は、マウスの毛根から採取した発毛を促す成分を分泌する毛乳頭細胞を毛の生えていない別のマウスの皮膚に注射器で移植し,毛を生やさせる動物実験に成功した。基礎的レベルとはいえ、4週間後に注射した部分から約8割の率で毛が生えてきたことを実証した。

アデランスの米国法人でアトランタに研究所、フィラデルフィアに製造拠点を持つ「アデランス・リサーチ・インスティチュート社」も細胞工学を応用して毛髪再生に挑んでいる。すでに第2相臨床試験を完了したものと見られるがアデランスは「ノーコメント」に徹する。

毛包細胞の顕微鏡写真こうした各社の取り組みは、かつらや植毛にとって代わる次世代再生医療技術として注目される。同時に、脱毛症に悩む患者からの期待は高い。脱毛症の原因解明と合わせて今後、成長因子の注入法、毛包(写真)幹細胞移植法、新しい毛包を形成する因子「Wnt」を用いた脱毛療法など実用化技術の確立や事業化に向けた胎動はさらに顕著になろう。

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