薬草の品種育成、フィールド調査に立ち返ることが必要

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2015.08.18

編集部

IMG_6142一般社団法人漢方産業化推進研究会(東京都千代田区)の第2回会員向けセミナーが5日、都内で開催され、千葉大学 環境健康フィールド科学センター 准教授の渡辺均氏が、薬草栽培の最新事情について講演した。この中で、渡辺氏は薬草の品種・系統育成について、フィールド調査に再び立ち返って収集から評価まで見直す必要性を強調した。

渡辺氏は「生薬メーカーが持っている品種・系統は必ずしも万能ではない」と指摘。ある種苗が、その地元の気候に合致して芽が出て、そこから収穫した種を違う地方で撒いても、土壌の条件が合わないとか、phが違うなどの原因でうまく栽培できないとした。

そこで、「地元の系統を選んで、もう一度評価し直して、それを原種圃において種を増やして、採種圃でさらに販売の種を取って、これを販売・配布して初めて、その先に生産者の栽培技術がある」と述べた。

渡辺氏は、「生薬メーカーから種をもらって、それから新しい品種を作ろうとしても、すごく遺伝的多様性があるようでない」として、「まずは野山に立ち戻って、野生種の系統、在来品種、既存の品種などを集めて、何がいいのかを考えることからはじめたほうが、時間がかかりそうで実は早い」と提言した。

さらに、こうしたフィールド調査による収集から評価については「種苗メーカーにお願いすれば、生薬メーカーの種苗よりも数十倍良いものができる」といい、種苗メーカーの育種レベルの高さに言及。野山は昔から民間薬の宝庫であった歴史から、再びフィールド調査の見直しを促した。

一方、園芸学的手法による薬用植物生産の事例を紹介。トウキについては現状、10a生産するのに30万粒の種子が必要で生産効率が悪い。また、各研究機関などが栽培したトウキをハプロタイプ分析した結果、様々な遺伝子が混在しているものが多いことがわかった。

そこで、同大学では高発芽率かつ優れた初期生育を目指して、1次・2次花序由来の種子だけを採種。従来の敷き藁を使った育苗方法では時間がかかることから、同大学が持つ「高度化セル成型苗生産利用システム」(セル成型)を用いて42日間で育苗、発芽率90%以上を実現した。「1次や2次の花序だけ採種すれば、生育のそろった種が採れる」(渡辺氏)という。

渡辺氏によると、従来のトウキ生産方法だと栽培に2年かかるが、「セル成型」であれば1年と短縮可能。反収は従来だと400~500kgだが、「セル成型」だと400~1,500kgと生産効率が上がるという。「セル成型は省力的・反収高で、生産者にとって少しは魅力的になるのではないか」(渡辺氏)とした。

また、トウキの根は漢方薬として使用されるが、葉の部分についても言及。利用例としてパンなどを挙げて、「野菜としての使い方がある。新しい食文化につながる」と述べた。

参考リンク
一般社団法人漢方産業化推進研究会

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