連載(上)炭酸ガスパックの特許係争を追う、19社を大阪地裁に提訴

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2015.08.26

編集部

炭酸ガスパック大阪の中小化粧品メーカーが医療用ベンチャーやエステ事業者19社を相手取って大阪地裁に炭酸ガスパック(写真)の製造・販売差し止めと損害賠償の支払いを求めて5回目の訴訟(5月)を起こした。

同化粧品メーカーが炭酸ガスパックの類似品の排除を目的に侵害者に対して訴訟を起こしたのは、今回で5回目。いまだに類似品が次々と市場に流通し、4年間も特許訴訟で係争している異常さに驚嘆と震撼が走っている。

化粧品メーカーが開発(1997年)した炭酸ガスパックの使用法は、ジェルに炭酸ガス(C02)を閉じ込め、炭酸ガスの効能を利用したフェイス用パック剤。ジェルまたは顆粒をカップに入れて混ぜ合わせて顔に厚めに塗り20~30分パックした後、洗い流す。

皮膚への作用機序は、薬物搬送システム(DDS)により皮膚から血管に浸透した炭酸ガス(C02)が血管を広げて血流を良くする血管拡張作用や炭酸ガスがヘモグロビンと結びついて血管内の酸素を皮膚組織へ取り込む酸素供給(抹消組織への酸素供給を増加するボーア効果)などの作用をもつ。

同社は、炭酸ガスパックの販売について、大手エステサロンやヘッドスパサロンなどに売り込み攻勢をかけるとともにOEM・ODM中心に受託事業を展開している。

こうした作用機序のある炭酸ガスパックに関して同社は、2012年1月に国内特許を初めて取得。現在までニ酸化炭素含有組成物、ニ酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物、ニ酸化炭素を発生する美容シート製品など計6件の国内特許と欧米、中国などの国際特許を取得している。

特許として権利化されたニ酸化炭素を発生する美容シート製品は、酸を含む液剤と炭酸塩を担持させたシート状基材とを含む美容シート。ニ酸化炭素の微細な気泡を均一に持続的に発生させる製剤技術を提供することを目的としたもの。この目的を実現するため、酸を含む液剤に疏水変性アルナルセルロースを配合することによってシート状芯材にニ酸化炭素を均一、持続的に発生できるようにした。

しかし、特許成立当時から市場に侵害品が流通していたことから同社は、2011年4月に侵害品を排除する目的で、3社を相手取って大阪地裁に製造・販売の差し止めと損害賠償を求めて訴訟。以来、4回の訴訟を行った。いずれも侵害品の差し止めを認める仮処分の決定や損害賠償の判決が出た。

ところが、これでも模倣品が市場で流通するなど「改善が見られない」として今年5月に19社の侵害者を相手取って5回目の訴訟を起こしたもの。

かつて1回の訴訟で12社を相手取って訴訟を起こしたケースがあるが今度、それを上回る19社にのぼる侵害者に対して訴訟を起こしたのは初めて。

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