がんに負けない漢方・薬膳レシピを紹介

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2015.09.24

編集部

IMG_6626神奈川県立がんセンター(神奈川県横浜市)、慶應義塾大学(東京都港区)共催の一般市民講座「漢方・薬膳 がんに負けない身体作り」が18日、同センターで開催され、同大学 環境情報学部 教授 医学部 兼担教授の渡辺賢治氏は、がん治療に対する漢方の活用法などを紹介する中で、「自分の身体の声をぜひ聞いてほしい」として、体調に合わせて日常生活を過ごすことの重要性を説いた。

また、同大学 SFC研究所 上席所員の宗形佳織氏は「“証”に対応した食材を選ぶことが大切」として、具体的な薬膳レシピを紹介した。

IMG_6632渡辺氏(写真左)は、がんに伴う代表的な症状である“食欲不振”に触れ、「食欲を高めることで抵抗力をつけることがものすごく大切。食べる喜びを味わえれば、腸内細菌も活性化して元気になる」と効能を説明した。また、「がん患者にとっては、日々の生活が大事」と強調し、食事のほかに運動、社会的活動などに取り組めるようにすることが、がん患者のサポートになるとした。

さらに、「冷えはよくない。免疫力を落としてしまう。基礎体力をつけて36℃以上を保つこと。36℃を下回ることがないようにしてほしい」とし、身体を冷やさないよう注意を促した。

漢方では、「気」「血」「水」が体内を循環することで、身体の働きを保つと考えられており、生体の不調を知るバロメーターとなっている。がん患者の特徴である“体力低下・全身倦怠感”“食欲不振”は漢方的には「気虚」、“皮膚の乾燥・脱毛”は「血虚」と見る。これらの“証”に対して、よく使う漢方薬を紹介。「気虚」に対しては「補中益気湯」、「気虚」と「血虚」が混じった「気血両虚」には「十全大補湯」を挙げた。

IMG_6634宗形氏(写真右)は、現代栄養学と薬膳学との相違を紹介。現代栄養学では、環境と体質をあまり重視せず、年間通じてすべての人に共通と考える。しかし、薬膳学では、「環境と体質を非常に重視している。季節や個人によって異なる」(宗形氏)。

また、現代栄養学では“食物の性”については概念がないものの、薬膳学では食材によって「熱」「温」「平」「涼」「寒」の5つの性質に分類する。例えば、「温」に属する生姜に触れ、「誰にとってもいいわけではない。身体が冷えている人や、胃が優れない人にとっては良い」(宗形氏)として、身体を温めるものなら何でもいいわけではなく、その人その人の身体の状態に応じて食材を選択することの重要性を強調した。

薬膳は、病気を予防し健康を増進させる「食養」と、病気の治療を補助する「食療」に分かれる。その中で今回は、食療の薬膳レシピを紹介。施膳に際しては、個人の身体の状態を表現した漢方独自の“証”に対応した食材と料理法を選択する。具体的な食材の組み合わせについては、漢方処方をお手本とし、「“証”に対応する数種の処方を見渡し、特徴的な生薬構成を読み取り、食材の組み合わせに応用して調理する」(宗形氏)。

また、漢方処方では、処方の主役となる生薬を「君薬」、「君薬」を補佐して「君薬」をより一層効果的に働かせる「臣薬」、処方全体の調和をとる「佐・使薬」に分けられることから、これを薬膳の食材にも応用する。

例えば“証”が「気虚」の場合、「気を補う」(君)+「気を巡らせる」(臣)+「水の偏りを直す」(佐・使)という漢方処方の組み合わせにのっとり、食材の性は平~温、料理法は温かい料理法を選択。具体的なレシピとして、「さつまいもと大豆のスープ」「鶏もも肉の香味炒め」などを紹介した。

「さつまいもと大豆のスープ」は、「気を補う」ものとしてさつま芋、大豆、コンソメスープの素、「気を巡らせる」ものとしてあさつき、「水の偏りを直す」ものとして玉ネギを採用。「鶏もも肉の香味炒め」では、鶏もも肉とジャガイモを「気を補う」食材、ポン酢を「気を巡らせる」もの、スナップエンドウを「水の偏りを直す」ものとしてそれぞれ採用した。

このほか、同大学の学生による薬膳レシピも披露。例えば「血虚証」に対しては、ブリ、人参、干し椎茸、酒かすなどを使った「みんなHOTに酒かす汁」と、豚肉、卵、ブルーベリー、赤ワイン、バルサミコ酢などを使った「豚肉のピカタ~ブルーベリーソース添え~」を紹介した。「血虚証」の食材については、「血を補う」+「血を巡らせる」+「気を巡らせる」+「水を補う」という組み合わせをベースにしている。

参考リンク
一般社団法人漢方産業化推進研究会
神奈川県立がんセンター
慶應義塾大学

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