便秘の漢方薬、上手く使いこなせば患者満足度は高い

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2017.03.27

編集部

第136回漢方医学フォーラム「慢性便秘患者のQOL、満足度を高める漢方治療~作用メカニズムと治療ガイドライン~」が23日、都内で開催され、講師の横浜市立大学大学院 医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授・診療部長の中島敦氏が、便秘治療に使われる代表的漢方薬を紹介し、「上手く使いこなせば患者の満足度は高い」と強調した。

慢性便秘は、年齢が高くなるとともに増え、60歳以上の男女に最も多く見られる。60歳以下については、女性ホルモンの関係から女性に多いのが特徴となっている。日本の便秘は、「世界的に見ると特異な状況にある。医学教育の過程で一度も授業で教えないし、卒後医師研修でも教えていない。便秘は病気ではないとして、放っておかれた」(中島氏)という。

米国では、便秘が患者の予後に及ぼす影響について他に先駆けて研究されており、慢性便秘がある患者は、それがない患者に比べて生存率が低いというデータがある。また、機能性消化管障害が予後に及ぼす影響も便秘が最も悪い。昨年、日本でも初めて心血管障害死と排便回数に関するデータが報告されており、その中には便秘による虚血性心疾患、脳卒中、虚血性発作などが見られ、「便秘は病気じゃないから放っておいて良い、ということを改めないといけないエビデンスが出てきている」(中島氏)。

臨床現場においては、例えば、医師による「お通じは毎日出ていますか?」という質問に対して、患者は「毎日出ている」と回答するものの、実はその裏には過度の怒責や残便感などによる“排便困難”を抱えているケースが多いのが実情。「患者は便秘で困っているのに、医師がそれを翻訳できない」(中島氏)ために話がかみ合わず、多くの患者が不適切な治療で不満を抱えているという。このため、医師の診療能力を高める必要性を強調した。

現在、西洋薬では便秘に対して酸化マグネシウムと刺激性下剤が最も多く使用されているが、いずれも習慣性、依存性が生じ、副作用もある上、快便が得られない。そこで、慢性便秘治療の一つとして漢方薬が再認識されるようになった。漢方薬は特に習慣性が低く、患者の安心感が高い。また、通常の便秘薬では対応しきれない腹部膨満などの便秘周辺症状にも効くなどといった理由が背景にある。

代表的な漢方薬として、作用が強い順に、エビデンスがしっかりしている大黄甘草湯、高齢者に満足度が高い麻子仁丸、作用がマイルドな潤腸湯、腹部膨満や腹痛向けの桂枝加芍薬大黄湯、やや太り気味に著効する防風通聖散、下腹部痛や腹部膨満に効く大建中湯の6つが挙げられた。「上手く使いこなせば患者満足度は高くなる。保険適用薬であるのにも関わらず、使いこなせる医師が少ないのが残念」(中島氏)。

中島氏の持論によると、便秘の原因は洋式トイレが普及したことにあるという。日本の和式トイレの蹲踞型は、解剖学的に恥骨と直腸が近接して直腸肛門角がより直線に近くなると同時に、太ももが大腸を圧迫することで排便をスムーズにする「自然な便秘薬作用」(中島氏)があった。そのため、洋式トイレにおいては、前かがみに35度傾けて排便することを勧める。「前かがみ35度の姿勢にするだけで、20%の患者の便秘が改善した」(同氏)としている。

参考リンク
横浜市立大学附属病院 肝胆膵消化器病学

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