同伴者もOK、ファンケル株主総会はなかなか”戦略的”

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2013.06.26

編集部

ファンケルの第33期定時株主総会が6月15日(土)、「横浜アリーナ」で開催された。同社の株主総会は、「開かれた株主総会」を目指して、個人株主が多く出席できるよう、1999年に株式を一部上場して以来、土日開催にしている。「開かれた株主総会」をのぞいてみた。

JR横浜線「新横浜駅」北口から会場の横浜アリーナ、明らかに株主さんらしい人の数。50メートルおきに等間隔で立ったファンケル社員が「おはようございます」と挨拶をして迎えていた。

会場内に入ると左側懇親会会場、右側総会会場、懇親会場入り口前ロビーは特別割引販売会場。

9:00受付、10:00~総会、12:00~懇親会がこの日のスケジュール。
3月31日時点での同社の株主数は、98,967人。過去最高となっていることなどから、ファンケル側では約5,500人の参加を見込んでいたが、この日の出席者は、4,258人、同伴者393人の合計4,651人。昨年よりも、合計で1,000人多い。同伴者を連れてきていいところも、「開かれた株主総会」の特徴か?

<株主総会>
株式会社ファンケル第33期株主総会-(1)10:01分、宮島和美社長が議長で総会が始まった。スクリーンで映像ナレーション尽きで事業経過及び成果の報告。その後、対処すべき課題や今後の事業展開について、約30分かけて宮島社長が説明した。

プレスルームからは、スクリーンに映し出される資料映像のみで会場の雰囲気はいま一つ伝わってこない。ファンケルは今年初めての赤字決算。おもしろくない株主さんも多かろうと想定する。決議事項が読み上げられ、10時45分頃質疑応答になったが、残念ながら質疑応答部分はプレス席にはクローズされた。

後で確認したところ、質問者は8人。「前期の決算内容と今後の対応について」「女性の活用(女性役員が増えた)について」「買収防衛策について」など。出席した株主さんに聞いたところ、創業以来の赤字決算への追及もさほど厳しくなく、淡々と終了した模様。質疑応答終了後、議案が拍手により可決され、12時ちょっと前に総会は終了した。

質疑応答の間にちょっとロビーをのぞいてみると・・・。

<特別割引販売会場>
DSCF7791特別割引販売会場は、優待価格で購入できるファンケル商品が10種類用意され、大勢の人が買い物をしていた。約30%オフの優待価格とあって人気の品を並べたテーブルはガランと空いている。壁際には「売り切れ」の文字が大きく貼られたパネルが並んでいた。

化粧品会社だけあって、全体的には女性株主さんの姿が多いようだが、ぱっと見は、年齢層も老若男女幅広い。ただ雰囲気としては、乳母車に赤ちゃんを連れた家族連れ、園児や小学生を連れた親子連れ、若いカップル、熟年世代の女性グループ…。「第33期定時株主総会」という認識がなかったら、ファンケルのファミリ―優待セールのような雰囲気もチラホラ。

<懇親会>
12時前に総会が終了し、あとは懇親会だ。
軽食受渡しは総会終了前から長蛇の列。お弁当は同伴者も含めて出席者全員に配られる。今年のメニューは、ファンケル発芽米入りおにぎりとおかず入り弁当とカロリミット500ml(写真)。
DSCF7769お弁当とお茶をもらった人たちは、懇親会会場の円卓を囲んだり、総会会場のアリーナ席や、ロビーの椅子に座って楽しそうに食べていた。家族サービスとランチを兼ねて行楽気分で訪れる株主さんも少なからずいるようだ。 昨年も出席したという30代の女性に感想を聞くと、「昨年のほうが凝っていたが、内容的には今年のほうがよかった」そう。

軽食エリアを囲むように、会場には事業別にブースがあり、ファンケルの歴史や各事業の展示がされている。人気の肌チェック・骨量測定には整理券が必要で、約100枚ずつ用意した整理券は、9:00の受付からわずか15分足らずで終了したとのこと。(来年、整理券が欲しい人は早めに並んだ方がいいですよ。)

DSCF7815無添加化粧品のコーナーでは、小学生の女の子が、ファンケルのスタッフにネールをしてもらい、うれしそう。将来のお客様、あるいは株主? 乳母車の預かりコーナーまで設置されていた同伴者OKの株主総会は、なかなかに”戦略的”でもある。

一番搾りの「青汁試飲」も人気で、お盆にのせた試飲カップはあっと間になくなっていた。

 

<池森会長へ聞いた>
会場をグルリとまわっていると、1人の男性をとりまく株主さんたち。環の中心は、業績不振の打開のために、10年ぶりに経営の第一線に復帰した創業者の池森賢二会長(75歳)。
DSCF7865一緒に写真撮影をお願いする株主さんたちもいる。会長、人気だ!

写真を撮り終えた30代のご夫婦に今年の株主総会について話を聞いてみた。今年も静岡から参加したという。

●今年の株主総会はいかがでした?
「人数は今年の方が多いけれど、内容的にはちょっと残念。ただ、会長のスピーチはすごくよかった。話もわかりやすくメリハリもあって。会長の話がなければ、残念で終わっていたかも・・・」。隣から奥さんが「創業者の思いが伝わってきた」と熱く語る。

●池森会長と何を話されたんですか?
「株を持ち続けてください、と言われたので、『持ち続けます』と答えました。会長に期待します。」

話を聞いている横では、やはり会長と写真を撮っていた別の株主さんの「買い増します」という声も聞こえる。 会長、人気だ!!

質疑応答中に行われた池森会長のスピーチはプレスルームには流れなかった。
せっかくだから、池森会長へインタビュー。

●株主さんたちにどんなことを話されたんですか?
「赤字事業は外に出して、不透明な部分をなくしたこと。ファンケルは中小企業のくせにお金を持ちすぎてるので社員が調子に乗ってお金を遣いまくった。社員の質が低下していた。外部に依存しすぎて、自分たちで考えることがなくなっていた。そのために、従業員教育を総合的に手掛ける社内組織「ファンケル大学」を設立した。富士フィルムみたいな異業種の参入も脅威になってくる。対抗するために、研究費を倍増したことなどを話しました。」

●会長へ期待する声も多いようですが?
「ファンケルは安全・安心に注力しすぎてスピード感に欠けていた。安全・安心はこれまで通り、それ以上にスピード感を意識してやっていく。社員の平均年齢は35才。定年まで30年。私の時間は3年。ちょうど10倍のスピードで頑張ってもらいたい。社員の尻をたたくために戻ってきた。」

雰囲気は穏やかながら、歯に衣着せぬ物言いで、課題をズバッ、ズバッ。創業者の責任と決意の念が感じられた。

 

DSCF776813:00を過ぎたころから、帰宅客も増えてきた。
どの株主総会でも”お楽しみ”の一つになっているらしい「おみやげ」は、帰りに配られていた。(写真)今年のお土産は:
・洗顔パウダーⅡしっとり59g×1本 & 泡立てクッション
・コエンザイムQ 約15日分30粒
・本搾り青汁 ベーシック 4.5g×10本入り
・発芽米スープごはん 鮭と彩り野菜の和風仕立て 21g×1袋

一通り、取材を終えて「新横浜駅」のホームに立った。気がつくと電車を持つ乗客の3人に一人、いや2人に一人が優待価格で買った商品の入った白いファンケルのロゴ入り袋を持っている。「これって、けっこうなPR効果じゃない? 」と思いつつ、取材を終了した。

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