株式会社アイスタイル 取締役 兼 CQO私の使命
インタビュー・山田メユミさん

インタビュー

監修:美容経済新聞

第5回「@cosme立ち上げへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲の力で事業化へ

オープン時から現在と変わらない姿

 

メルマガの反響を見ているうちに、この熱い声を私の手元に留めておくのはもったいないなと思うようになりました。さらに周囲が「これは面白い」と言ってくれたんです。たぶん自分一人だったら、会社を立ち上げたり事業化したりというところまで踏み切れなかったと思いますね。自分に特別なITスキルがあったわけでもないですし。それが、周囲の力でどんどん現実化していった。共に起業して今も一緒にやっている吉松(徹郎)も、私からメルマガや化粧品業界の話を聞きながら、自分なりにアメリカの事例なども調べて、隣でどんどん事業計画を作っていきました。もう一人、一緒に始めた仲間にシステムエンジニアがいて、実際にサイトのプロトタイプを私の話を聞きながら構築していってくれたんです。私はサービスの企画やディレクション、コアとなるデータ収集を担当しまして、それぞれ得意分野を組み合わせながら、机を並べて夜な夜なああでもない、こうでもないとディスカッションして少しずつ形に落としていきました。これがアイスタイルの原点です。

サービスの設計する上で考えていたのは、みんなでつくる“コスメガイド”のようなデータベースをつくりたいということ。一つひとつの口コミは商品に紐付いていて、そして色んな人の意見がそれぞれに集まっている場にしたかったんです。というのも、化粧品というのは、100人いれば100通りの感想があるもの。この人に合ってもこの人には合わないということはザラだし、20代の人の評価と40代の人の評価は全然違う。だから、どんな人が発言したのかも見えないといけないと思っていました。それがリアルタイムで集計されて、自分が見たい情報を切り出して見られたらきっと、ユーザーにとって便利なものになるだろうと思いました。

さらに、当時メルマガの読者だった女性たちに「こういうことを考えているのだけれど、協力してくれませんか」という呼びかけをしたところ、ボランティアでもいいからと50名ぐらい手を上げてくださった方々がいたんです。当時、表参道に吉松の先輩から小さな事務所をほぼ無償でお借りしていました。そこに通っていただける方ということで、最終的には約10名の方とともに初代の「@cosme編集部」を立ち上げました。

OLさんや学生さん、主婦の方もいらっしゃったのですが、いろんな属性の方と「どんなサイトにするか」「デザインはどうするか」「どんな商品情報や口コミ情報から集めるか」といったことを話し合い、99年12月にサイト『@cosme』をオープンするに至ったんです。7月に有限会社として立ち上げ、約5か月後のサイトオープンでした。

 

作るのは女性向けサイトではなく

生活者視点の中立な口コミサイト

 

サイトの骨格は今と基本的には同じです。化粧品選びに悩む方や、化粧品を選ぶ時にどういう情報が欲しいか、という視点でコンテンツを作りました。レビューを中心とした化粧品のデータベースが根幹にあり、発売日順に並べたカレンダーや検索機能、商品の使い方を質問できるQ&Aがあるといったところでしょうか。

当時からすごく大事にしていたのは「中立」「信頼性」「クリーンなイメージ」ですね。化粧品を扱う女性向けのサイトというと、ラグジュアリーなテイストにしたり、外国の女性がビジュアルとして出ていたり、ピンクが背景の可愛いものだったりというのが多かったと思うのですが、私たちは決して女性サイトを作ろうというつもりはなかったんです。あくまでも化粧品や美容のためのサイトであり、主役は生活者の皆さん。皆さんの声を中立に掲載するサイトです、ということを理解していただきたかった。男性が利用してももちろんいいわけです。だから、あまり女性らしさに寄せすぎず、クリーンで、中立で、信頼できるコミュニティというイメージで、メインカラーはミントグリーンと決めました。

 

株式会社アイスタイル 取締役 兼 CQO 山田メユミさん

株式会社アイスタイル
取締役 兼 CQO


東京理科大学基礎工学部生物工学科卒業。
化粧品メーカーなどを経て、1999年に個人で発行していた化粧品のメールマガジンをきっかけに『@cosme』を企画立案、サイト立ち上げに参画。アイスタイルの共同創業者であり、現在も同社取締役兼CQOを務めるほか、経済産業省等の消費およびインターネット関連委員も歴任している。2017年より、株式会社かんぽ生命保険、セイノーホールディングス株式会社の社外取締役を務める。
文=岡本茉衣 写真=是枝右恭

#

↑