【連載】台頭する創薬・再生医療ベンチャー【11】HMT、マザーズ上場、メタボローム事業好調で今期増収増益

2014.01.23

特集

編集部

研究開発型ベンチャーのヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(HMT、山形県鶴岡市)は、慶応大と共同開発したキャピラリー電気泳動・質量分析法(CE-MS法)を使ったメタボローム(代謝物質)の分析事業を目的に法人を設立(2003年7月)。2013年12月に東証マザーズ市場に上場した。上場による調達資金は、メタボローム解析(質量分析)の設備資金と米国子会社の運転資金などに充当した。

ヒューマンメタボローム・テクノロジー_2同社と慶応大が共同開発したメタボローム測定・解析システム「CE-MS」(写真)は、疾病ごとに特定のメタボローム(バイオマーカー)を測定することで、症状を診断するもの。イオン性の代謝物質を一度に1,000種類以上、約30分で測定することができる特徴を持つ。

ヒューマンメタボローム・テクノロジー_1従来からメタボローム測定に利用されていた質量分析法「GC-MS法」や「LC-MS法」は、特定の代謝物質だけしか分析できず分析処理が煩雑などの課題があった。さらに同社は、慶応大との共同開発をもとに新たに計測機器の大手米アジレント・テクノロジー社と共同で開発(2006年5月)した3種類のメソッドでイオン性代謝物の一斉分析を行なえる「メタボロームソリューションシステム」を実用化した。

こうした一連のメタボローム測定・解析技術を使って現在、製薬や食品会社、大学、公的研究機関などからメタボローム解析試験を受託する「メタボローム受託解析事業」とバイオマーカーの診断法開発による体外診断用医薬品の開発・販売や製薬会社の新薬開発などに伴う臨床試験に体外診断用医薬品を導入することで、研究開発協力金や医薬品販売時の製品売上に応じたロイヤリティを獲得する「バイオマーカー事業」及びメタボローム解析を支援するためキットの販売や技術者を派遣する「メタボロミクスキット事業」など4事業を展開している。

4事業の中で事業基盤となっているのがメタボローム受託解析事業。同社の2014年3月期業績(連結)は、売上高が前期比29%増の6億3800万円、純利益2300万円の黒字(前期9500万円の赤字)を見込む。売り上げの大半がメタボローム受託解析で占める。

メタボローム解析事業に続き成長の種と見込むバイオマーカー事業では、精神疾患、がん、生活習慣病などの新規診断法に役立て製薬会社とのライセンス契約に力を入れる。すでに、うつ病の開発で候補となるバイオマーカーを見つけ2009年に特許を出願。現在、うつ病をターゲットにした診断薬の臨床試験に入っている。

一方、海外でのメタボローム受託解析サービスにも力を入れる。2009年秋、オランダにデモセンターを設置。また、米国アジレント・テクノロジー社と共同研究契約(2005年6月)を結びCE-MS法の開発を進める同時に同社の連結子会社「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーアメリカ」(米法人、2012年11月設立)に合わせて開発したがん研究に特化した受託解析サービス「カルシノスコープ」の拡販と営業体制の構築を進めるなどして欧米市場での売り上げを2015年度までに3億円に持って行く方針。

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ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ

 

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