「化粧品原料メーカー、商社の事業展開に迫る」【20】 アプレシエの化粧機能性ユーザーに認知~昭和電工(上)

2014.06.4

特集

編集部

昭和電工は現在、化粧品や医薬部外品に使われるアスコルビン酸PMや水溶性ビタミンC誘導体「アプレシエ」(APPS)、水に溶けるビタミンE誘導体「ティーピーエヌエイ」、アミノ酸系パーマネント用剤など全部で9品目の化粧機能性原料を市場に投入し、数百社の化粧品メーカーに販売している。

アプレシエこの中で同社が最も力を入れている代表的な化粧品原料が水溶性ビタミンC誘導体「アプレシエ」(写真)。アプレシエ(表示名称・パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na)は、リン酸型ビタミンC誘導体(アスコルビン酸PS)にパルミチン酸(飽和脂肪酸)を導入することにより、親油性を付与した新しい水溶性ビタミンC誘導体(両親媒性)。性状は粉状。アプレシエの市場投入は、2005年に遡るが以降、ユーザーから化粧機能性が徐々に認められて現在、同社の売れ行きナンバーワン商品に躍り出た。

特徴は、既存のビタミンC誘導体に比べて皮膚のコラーゲン合成を促進する作用を持ち皮膚浸透性、ビタミンCへの変換に優れる。特に、紫外線により発生する活性酸素を除去し、皮膚のダメージを改善する。

同社は、ヒト皮膚繊維芽細胞の培養中にアプレシエとアスコルビン酸-2-グルコシド(AG)を1~10ナノ㍍の濃度で添加し、72時間培養した後に培養上清中のI型コラーゲン量を定量した実験を行なった。

その結果、アプレシエは、既存のビタミンC誘導体に比べ、皮膚浸透性に優れ、低い濃度領域においても顕著に高いコラーゲン合成促進能を示したことが明らかになった。グラフにアプレシエのコラーゲン合成促進能を示す。また、アプレシエのコラーゲン合成の促進と合わせて細胞膜浸透性、皮膚内への誘導体の浸透性向上、細胞内活性酸素の除去などについても試験結果からエビデンスを実証している。

アプレシエのコラーゲン合成促進能

こうしたアプレシエの化粧機能性を実現した技術的要因として水系安定化組成物や化合物の設計医術を開発したことが大きい。

水系で不安定な生理活性成分レチノイドを安定化するため同社は、水素添加リン脂質からなる脂質2分子膜中に、レチノイドと疎水性抗酸化剤とを内包するレチノイド内包粒子を含有することを特徴とする水系安定化組成物を開発し、レチノイド保存安定性の良好な皮膚外用剤及び化粧料を提供することに繋げた。また、ビタミンCの原末アスコルビン酸誘導体の機能を高めるため、2位の水酸基をモノリン酸化した上で、6位の水酸基を脂肪酸によりアシル化(脂肪酸の合成)する方法で化合物を設計した。これによりアスコルビン酸の皮膚組織への浸透性増大や皮膚深部への到達機能を実現させた。

同社は、水系安定化組成物を含めてこれまで10数件の特許を取得している。

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昭和電工株式会社

 

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