「化粧品原料メーカー、商社の事業展開に迫る」【22】 新規化粧品素材ナールスゲン、ナールスコーポ設立し事業化(上)

2014.06.11

特集

編集部

ナールスゲン(写真)と呼ばれる新しい化粧品素材が開発された。ナールスゲンは、アミノ酸(グルタミン酸)の誘導体として設計・合成した化合物。性状は液体で、皮膚の線維芽細胞を活性化し、コラーゲンやエラスチンを産生して肌に弾力性とつやを与える作用がある。写真にナールスゲンを詰めた容器の外観を示す。

ナ―ルスゲン共同研究に携わった大手製薬の元取締役や大学教授らが共同で事業会社「ナールスコーポレーション」(京都府)を設立し、ナ―ルスゲンの製造・販売を始めた。

ナールスゲンの開発は、2009年度に独法科学技術振興機構(JJT)が産学連携などの研究成果を新興企業や起業家などに技術移転して事業化する目的で、京都大学化学研究所に研究開発課題「新規γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)阻害物質によって引き起こされる細胞内コラーゲン産生の応用」について研究を委託(助成金交付)。

委託研究で京大の研究グループは、アミノ酸(グルタミン酸)の誘導体として設計・合成したグルタミン酸関連物質ナールスゲンが活性酸素などの除去に関与する抗酸化物質グルタチオンの代謝分解の役割を担うGGT 活性の阻害作用を見出し、生体の自然回復を活性化することを解明。同時に、選択的にナールスゲンを創製することに成功した。さらに、京大の研究グループは、大阪市大との共同研究で、ナールスゲンのGGT 阻害活性に加えて皮膚線維芽細胞によるコラーゲンやエラスチン(皮膚のつや・張りを保つたんぱく質)の細胞内コラーゲン産生を促進する特性があることを立証するなどしてナールスゲンの化粧品素材開発に繋げた。

ナールスゲンの特異的な作用や効果は、皮膚真皮にあるヒト皮膚線維芽細胞に働きかけてコラーゲンの生合成を約2~3倍に促進させる。同時に、ビタミンCと併用することでさらに高いコラーゲン産生作用を生み出すほかエラスチンの産生についても1.5倍以上促進する作用がある。

大手化粧品メーカーでのヒトモニター試験では、コラーゲンの産生促進に加えて弾性線維であるエラスチンとともに皮膚の張りや弾力、つやなどを保つことを確認。肌の弾力性試験では、合成のペプチドと比べて3ヵ月後に約1.6倍高いことが実証された。また、京大で行なった細胞レベルでの毒性試験や化粧品工業連合会指定のガイドラインに沿った9項目の安全試験でも全て陰性になるなど安全性が実証されている。グラフにコラーゲンの産生促進効果とヒトモニター試験による肌弾力改善の経時変化を示す。

ナールスゲン_グラフ

こうした化粧機能性、安全性などが全てクリアし、アンチエイジング化粧品原料となることが実証されたことから2012年3月に共同研究に携わった研究者らが共同で、大学発ベンチャー企業「ナールスコーポレーション」を設立し、事業化に踏み切ったもの。大手製薬の元取締役で、同社の代表に就いた松本和男社長は「大学発ベンチャーとして研究成果を社会に還元することが我々の使命。利益の追求だけでなく技術力の向上や産業界の活性に資する事業展開を進めて行く」と老練真摯な中に緻密で壮大な構図を描く。

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株式会社ナールスコーポレーション

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