「化粧品原料メーカー、商社の事業展開に迫る」【23】 繊維企業などから用途開発のオファー、2億円の売り上げ目標(下)

2014.06.12

特集

編集部

大学発ベンチャー企業のナールスコーポレーションは、会社を設立して今年で3年目に入った。事業化して日も浅いが徐々に「ナールスゲン」(商品名)の事業成果が見えてきた。

現在、ナ―ルスゲンの製造は、医薬品中間体メーカーに処方箋に基づいて合成を委託。また、各種分析、品質チェックは、全て自社で実施している。肝心の販売面は、事業立ち上げ時から大手化粧品会社に独占販売したことで、売り上げを実現している。

ここへきて「大手化粧品会社の好意で、他の化粧品会社にも販売できるようになった」としてOEM会社などに販売委託を検討中。また、ナールスゲンの機能性に着目した繊維企業などから用途開発のオファーが舞い込むなど新たな受託開発の動きも見られる。

今後、薬用化粧品として展開するため、医薬部外品の取得を目指して医療分野への道も開いて行く。さらに、世界市場での展開も視野に入れており現在、提携先を物色中。

しかし、コスト面、製剤面での改良など資金面での需要は引き続き旺盛だ。「事業を展開する上で資金は、重要な血液源だが、ベンチャーキャピタル(VC)などからの投資は考えていない」という。

同社は、大学や公的機関との連携を図って政府の研究開発資金の活用や受託開発などで資金を充当して行く方針。当面、約2億円の大台乗せが目標。果たして科学的な裏付けを持つナールスゲンのコラーゲンやエラスチンの産生、肌を改善する機能など訴求力を発揮して新たな受注に繋げて行けるか、成長の軌道に熱い視線が向けられている。

一般的にベンチャー企業の共通した課題として開発した新製品を販路開拓しながら取引先の拡大、受注に繋げて行くか、が大きな課題となっている。

大学発ベンチャーを含めて現在のベンチャービジネスは、社会に貢献する新製品を開発しても販売面で頓挫するケースが余りにも多い。

現在、行政主導型の販売支援策として経産省の経営革新事業認定がある。同事業認定は、新製品・新技術を開発して新規事業に乗り出す中小・ベンチャー企業の事業化計画を審査して認定することで、認定企業に開発資金の補助に加えて金融支援や販路開拓支援を行なうもの。

だが、販路開拓は、ベンチャー自らの自助努力が基本原則とはいえ、認定を受けたベンチャーなどが販売支援申請の窓口になっている地域の中小企業振興センターに販売支援の申請を行なっても審査にパスしたベンチャーしか販路開拓の支援が受けられない。行政のベンチャーに対する販売支援の有り方や販売支援のスキーム構築などについて再検討する時期に来ている。

その意味で、同社に対して事業化支援を行なったJSTや公益財団京都産業21、ニュービジネス(NBK)協議会(同社は、2012年にNBK大賞受賞)などを含めて地元経産局や中小機構などの公的機関が販路開拓について連携の輪を広げて支援の検討を行なうことを期待したい。

現在は、ベンチャーに対する販売支援として経産省の経営革新事業認定の中小・ベンチャー企業で、販売支援の申請を行ない審査にパスしたベンチャーに対してのみ販路開拓支援を行なっている。これではあくまでも限定的過ぎる。行政によるベンチャーの事業化後の販売支援の有り方について再検討する時期に来ている。

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株式会社ナールスコーポレーション

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