連載・新興市場上場の美容業界各社の経営・事業動向に迫る最終回:1本調子の成長期待できず、ビジネスモデル再検討も(上)

2014.11.11

特集

編集部

東証マザーズやジャスダックなどのベンチャー企業向け新興市場(東証マザーズ、ジャスダック株式市場)に上場した美容関連企業9社の各社別の事業実態と今後の事業展開に視点を当て成長の軌道を見てきた。いずれもベンチャーキャピタル(VC・投資会社)から投資を受けて事業資金を確保し、事業を成長軌道に乗せて新興市場への上場を実現したもの。現在、新興市場に上場した9社の各社別企業業績(表)は、企業間格差が見られ、毎年、一本調子の成長(増収増益)とは言いがたい状況にある。
表この要因として化粧品市場が成熟期を迎えて伸びが期待できないことやこれまで購買の中心をなしていた20~30代の購買人口が高齢化に伴って50歳代の購買人口に切り替わるなど月額購買単価の減少、消費税の反動も加わって企業業績に影響を及ぼしている。また、化粧品通販市場には新規参入が相次ぎ、セールスと銘打った値引き合戦で価格破壊が顕著になるなど収益確保は一段と厳しさを増している。理美容企業もライバル企業同士の出店構成で店舗の統廃合を余儀なくされており、スケールメリットによるビジネスモデルの再検討は、避けられない状況にある。

こうした中で、新興市場の東証マザーズ市場に上場(2012年3月)してわずか8ヵ月後の2012年11月に東証1部に上りつめた美容系総合ポータルサイト「@cosme(アットコスメ)」事業を運営する株式会社アイスタイル(東京都港区)の成長軌跡をモデルケースとして検証した。

同社の企業・事業の主な変遷は、事業に資金を投下するための増資による資金調達と事業規模の拡大に特徴がある。1999年7月に法人化して以降、同年12月にネットコスメ情報のポータルサイト「@cosme」を立ち上げた。同時に、関連広告サービス、マーケティング・リサーチなどのサービス事業も開始。同年12月にVCのネットイヤーインキュベーションキャピタル・コンソーシアムから出資を受けた。2002年11月に化粧品オンラインショッピングサイト「コスメ・コム」の運営事業を開始。2003年6月には、独立行政法人中小企業総合事業団(現中小機構)が出資して設立した投資ファンド「サンブリッジ・テクノロジーファンド2002投資事業有限責任組合」(無限責任組合員サンブリッジ グローバルベンチャーズ)が出資したのを契機に資金調達に弾みがつき、2005年には、株式会社サイバーエージェント(東京都渋谷区)から出資を受けて増資。2008年2月にヤフー株式会社(東京都港区)から出資を受けて増資し電子商取引(EC)を目的とした子会社「コスメ・コム」を設立。2008年4月に株式会社講談社(東京都文京区)から出資を受けた。

こうしたVCや投資に意欲を燃やす企業などから増資を目的に出資を受けて事業を成長軌道に乗せ、マザーズ上場、東証1部にのぼりつめた。特に、法人化してマザーズ市場に上場するまでに13年の歳月を要したがマザーズ上場後8ヵ月で東証1部に上りつめたのは極めて珍しいケース。

だが同社の足元の業績を見ると手放しでは喜べない状況にある。同社の今期業績(連結)は、売上高73億円(前年同期比3.1%増)、営業利益2億5,400万円(同46.3%減)、利益1億1,000万円(同185.7%増)を見込んでいる。

事業の中心を成す「@cosme」のメディア事業(前期売上高36億1,700万円)が会員数の伸び悩みで、成長が見込めず引き続き厳しい状況にある。このため、ユーザー向けサービス開発に力を入れ個人向け、企業向け収益の改善を図る計画。

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