連載・異業種から化粧品分野に新規参入した上場各社の化粧品事業に迫る【16】日華化学、2万5千件の美容サロンと取引、ウィン・ウィンの関係構築(下)

2015.04.1

特集

編集部

日華化学は、来期(2016年12月期)化粧品事業の売上高を100億円達成目指す。目標通り達成すれば化粧品分野に進出(1982年)して満34年ぶりの快挙となる。

同社が長い期間をかけて高収益を実現した要因は、美容サロンと協調した独自のマーケットインの仕組みを作ったことが大きい。
同社が化粧品分野に進出する際、どのような市場に参入するか、を検討した。「当時は、コンシューマ市場で大手化粧品メーカー同士が激しい競争を展開するなど後発組みとして進出するにはリスクが大きかった。そうした広告競争に陥りがちな一般消費者市場を避け、当社の研究開発力をしっかり評価いただけるプロ向け市場に白羽の矢を当てて参入を決断した」という。しかし、毛髪化粧品を美容サロン向けに販売したとはいえ好・不調の波が大きく安定した販売状況にはなかった。

同社は、進出後、2回ほど大きな販売不振に見舞われ辛苦をなめた。そこで、販売不振の原因を分析した結果、市場のニーズよりも商品開発を優先するプロダクトに問題があるとの結論に至った。プロダクト優先のビジネス展開では、商品化してから市場を探して販売するため、平準化した販売が機動的にできないことが判明した。

そうした中から編み出したのが「顧客代表制度」と呼ぶ「市場戦略指向型」(マーケティング・オリエンテッド型)の仕組み作りだった。
同制度は、エンドユーザーに最も身近にいて商材やトレンドに詳しいサロンオーナー数名に商品開発会議に参加してもらい、オーナーの考えや発言を踏まえて市場や顧客のニーズを汲み取り、商品開発に反映させるマーケットインを具現化したもの。2004年に同制度を導入し、今もって毎月1回定期開催している。

一方、同社が開発・商品化したヘアケア剤、スタイリング剤などの店頭販売品(店販品)を美容サロンが販売するノミネートサロン戦略も注目に値する。
同戦略は、店販品の販売に意欲のあるサロンを全国からノミネートして選び拡販するもの。

同社にとっては、店販品の拡販に繋がる一方、美容サロンも利益の一部が還元されて付加価値がつくなど双方にとってウィン&ウィンの関係が保たれる。
現在、国内に美容サロンは、約20万件ある。この内、同社が毛髪化粧品(デミ化粧品)で取引している美容サロン数は約2万5,000件にのぼる。この美容サロンの橋頭保を強固に構築した事が収益向上の原動力であり事業の強みとなっている。

今後、化粧品事業で注目されるのは海外展開の取り組み。2011年、中国にデミチャイナ、2012年、韓国にデミコリアを設立(子会社)したが、今後、海外現地法人をいかに成長軌道に乗せて行くか、注目点。同社は「新興国も含めて新たな海外展開を検討中」としており、マーケティング・オリエンテッドによるグローバル化の推進が注視される。

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