【連載】幹細胞化粧品開発元年【4】日本メナード化粧品、色素幹細胞から肌のメラノサイト発生など解明(上)

2015.09.17

特集

編集部

日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市)は、「若い肌にほとんど見られないしわやしみが加齢とともになぜ現れるのか」―。そんな当たり前の疑問から肌細胞の一生について研究を進めた。その結果として辿りついたのが幹細胞だった。それも、再生医療という視点で幹細胞研究に取り組んだわけではなかった。

同社が総合研究所で幹細胞の研究をスタートさせたのは2003年と歴史は古い。幹細胞研究に着手した当初、ヒト細胞から肝細胞をだけを取り出すことに成功。続いて2005年に、採取した幹細胞のDNAやたんぱく質の解析を行って幹細胞が肌を再生する能力を持つことを明らかにした。

これを足掛かりに同社は、皮膚の幹細胞研究に拍車をかけ ①皮膚幹細胞の抗老化研究 ②幹細胞研究を応用したシミ発生原因の研究(美白研究) ③首のシワ・タルミの原因(抗老化)など幹細胞の多角的研究に取り組んだ。

皮膚幹細胞の抗老化研究は肌の幹細胞の存在と役割を研究したもの。肌の幹細胞は、表皮と真皮それぞれの新しい細胞を生みだして肌の生まれ変わりを担っている。表皮の幹細胞は、新しい角化細胞を生み出し、表皮を生まれ変わらせる。また、真皮の幹細胞は新しい線維芽細胞を生み出し、真皮を生まれ変わらせる。しかし、加齢とともに幹細胞が減少すると肌の生まれ変わる能力が低下してシワ、タルミが現れてくる。

同社は、こうした現象を突き止めるため、幹細胞に特有のタンパク質を指標に肌の幹細胞の数を調べた結果、肌の幹細胞が加齢とともに減少することを確認した。この幹細胞の減少によって肌の生まれ変わる能力が低下、肌は老化して乾燥し、シワ、タルミが現れてくることを見出した。

幹細胞研究を応用したシミ発生原因の研究については、メラニン色素を生成する細胞「メラノサイト」になる前段階に着目し、幹細胞研究を応用してより根本的なシミ発生の原因について研究した。

メラノサイトは、皮脂腺の下にあるバルジと呼ばれる領域に存在する色素幹細胞から生まれ「メラノブラスト」というメラノサイトの前駆細胞を経てメラノサイトに分化成長する。しかし、その成長過程は確認されていなかった(色素幹細胞データ図)。

色素幹細胞_(2)

そこで、色素幹細胞からメラノブラスト、メラノサイトへの成長過程を観察する研究を実施。幹細胞研究を応用してこれまで知られていなかった色素幹細胞特有のマーカーを発見し、その染色に成功。その後、メラノブラスト、メラノサイトも同様に、特有のマーカーを染色して色素幹細胞からメラノブラスト、メラノサイトへと成長していく過程も確認し、色素幹細胞からどのようにして肌のメラノサイトが生まれるか、を明らかにした。また、メラニン生成能力がどの段階で備わるかを幹細胞からメラノブラスト、メラノサイトに成長させて確認したところ、メラノブラストの段階で、酵素の生成・メラニン生成に関わる因子「MITF」(転写因子)や「チロシナーゼ」、「TRP-2」、「TRP-1」という酵素が関わっていることが判明。これにより、メラノサイトのメラニン生成能力は、メラノブラストの段階から備わりメラニン生成を左右することを明らかにした。

紫外線がメラノサイトのメラニン生成能力に及ぼす影響についても研究した。その結果、幹細胞からメラノブラスト、メラノサイトに成長する過程で、紫外線によって表皮の細胞から発生する刺激物質が作用するとメラノサイトのメラニン生成能力が高まることがわかった。メラニン生成能力は、メラノサイト内で生成されたメラニン量を測定してエビデンスを実証した。

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