【連載】幹細胞化粧品開発元年【5】資生堂、ランゲルハンス細胞研究、化粧品開発に応用(下)

2015.09.28

特集

編集部

資生堂は、米ボストンのマサチューセッツ総合病院(MGH)とハーバード医科大学の三者によって設立(1989年)された皮膚科学総合研究所において肌の免疫機能をつかさどる「ランゲルハンス細胞」(免疫細胞)の研究に取り組んでいる。

表皮に分布するランゲルハンス細胞は、肌がダメージを受けた時、本来の健康な状態に戻ろうと働く「ホメオスタシス」(生体恒常性)維持能力を持つ免疫細胞。肌の免疫機能をつかさどり肌の免疫機能の主役であるランゲルハンス細胞の構造や機能などを解明することで、低下した肌機能の回復に繋げるとともに化粧品開発に応用する。

米皮膚総研でのランゲルハンス細胞研究は、肌の表皮の上層に存在し、表皮全体細胞数の2~5%を占めるランゲルハンス細胞の構造について突起(樹状突起)を伸ばし合って網目状のネットワークを形成。突起の先には、レセプター(受容体)を持ち一つの細胞に約3,000個のレセプターが存在。それによって異物の侵入を察知することを解明。

また、ランゲルハンス細胞の機能については、菌や有害物質などの異物が体内に侵入すると ①防御態勢を整える指令を出す ②肌に外的刺激を与えると肌内部に炎症などの肌トラブルを引き起こす刺激応答因子が出現。それを感知するとランゲルハンス細胞を覆う鎮静化酵素が直接、その因子を攻撃して自己防衛を図ることを判明した。

i資生堂、ランゲルハンス細胞の鎮静化酵素の解析データ―図さらに同社は、自己防衛機能の加齢による変化を調査したところ、ランゲルハンス細胞の鎮静化酵素の量は、若年層(26-30歳)より、マチュア層(49-58歳)が著しく減少しているとの結果を得た(データ図)。

これまで米皮膚総研での主な研究成果として1993年にランゲルハンス細胞が肌と脳に密接に繋がっていることを科学的に解明。2007年には、過剰な紫外線や乾燥などの肌ストレス因子が直接的に作用しているものと異なるメカニズムがあるなど肌トラブルの新たなメカニズムを解明した。2014年には、ランゲルハンス細胞が刺激応答因子を鎮静化する自己防御の機能は、加齢によって低下することを発見。自己防御機能が低下した肌の防御機能を回復させる成分とし3成分(2β‐グルカン、アクアインプール(資生堂独自開発)、ブルガリアローズウォーター)を効果的に組み合わせた複合成分の開発に成功し、特許を出願。さらに、複合成分を配合したプロトタイプ美容液(試作品)を開発するなどの成果を出している。引き続き、肌の恒常性を維持する新たなソリューション開発に向けて肌の基礎研究に取り組んでいる。

一般に、樹状細胞といわれるランゲルハンス細胞やヴェ-ル細胞、真皮内樹状細胞などは「樹状」の細胞形態を呈し、特有な細胞突起を有していることやリンパ組織のみならず広く全身に分布するなどの共通な特徴がある。

国内では、ランゲルハンス細胞と免疫美容の普及啓蒙を図る目的で、関心のある中小企業が参画して免疫美容団体が設立されている。

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