【連載】幹細胞化粧品開発元年【8】コーセー、幹細胞ダメージ抑制、育毛効果の成分開発し商品化へ(下)

2015.10.14

特集

編集部

コーセーは、幹細胞のダメージを抑制する効果のある美容成分を見出し、この美容成分を育毛、まつ毛ケア商品などの開発に応用する取り組みを行っている。

毛髪の生え変わるサイクル(毛周期)のうち「休止期」の毛包の根元には、バルジ領域と呼ばれる部位がある。
最近になってこのバルジ領域に毛を作る「毛包幹細胞」と、色を作る「色素幹細胞」が存在し、それぞれが成長期にかけて細胞分裂することによって毛母に細胞の元が供給され、毛髪が形成されることが明らかになってきた。また、バルジ領域内の幹細胞の核にあるDNAが損傷を受けると幹細胞としての機能が失われ、毛母への細胞供給がストップするなど健康な毛が育たなかったり白髪が生じたりする原因と考えられている。

同社は、このバルジ領域で、毛を作る「毛包幹細胞」と色を作る「色素幹細胞」が存在し、それぞれが細胞分裂することによって毛母に細胞の元が供給され、毛髪を形成する2種類の幹細胞に着目し、DNAに対するダメージ抑制効果のある美容成分を探索した。その結果、ビワ葉エキスとシャクヤクエキスにDNAダメージを抑制する効果があることを見出した。

fd4f477eab82c63a5d37984a99ff09fdDNAダメージを抑制する効果の試験(表)は、ダメージの指標「γH2AX」を免疫染色し、ビワ葉エキスとシャクヤクエキスを添加した場合のγH2AX陽性細胞の割合を比較することにより実証した。

こうした幹細胞ダメージ抑制効果が見出されたビワ葉エキスとシャクヤクエキスに桑の根皮から抽出し、毛周期を成長期に促す働きがあり幹細胞の核にあるデオキシリボ核酸(DNA)の損傷を抑える効果を持つソウハクヒエキスを加えることで「育毛への複合的な効果が期待できる」として現在、育毛、まつ毛ケア製品への応用研究に取り組んでいる。

薄毛は正常な毛周期が維持できなくなり、毛包のミニチュア化とともに成長期の期間が短縮して十分な硬毛形成ができず発症するといわれている。

これまでも、頭皮のケアや男性ホルモンの抑制、毛乳頭活性化といった対策がとられてきたが、今もって根本的な解決には至っていない。

そうした中で、同社のiPS細胞の皮膚科学研究や毛包内の幹細胞に着目した研究への取り組みは大きな期待感を持って注視される。

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