【連載】幹細胞化粧品開発元年【9】アデランス、抗がん剤の脱毛を予防する産学共同研究スタート(下)

2015.10.16

特集

編集部

抗がん剤副作用_(2)米国において細胞に視点を当てて毛髪を再生させる治療法に取り組むアデランスは、国内において大分大学と共同で、抗がん剤治療の副作用である脱毛(写真)の予防に関する研究に取り組んでいる。化学療法など抗ガン剤治療による脱毛に悩むがん患者に対して、髪の毛の脱毛を防止する脱毛剤を開発することで、患者のクオリティ・オブ・ライフを実現する狙い。抗がん剤による脱毛を解明し、予防剤の開発を目指す研究に取り組むのは国内でも珍しいケース。

アデランスと大分大学との抗がん剤による脱毛防止の共同研究(2013年11月、共同研究契約を締結)は、大分大学の研究成果である「αリポ酸誘導体」(抗酸化物質)を用いて製剤化の開発にメドを付けて事業化を実現するもの。

大分大学医学部では、2009年から抗酸化剤とがんや炎症などの疾患との関係を明らかにする研究を始め、2010年に「癌・炎症とαリポ酸研究会」(CIA研究会)を立ち上げた。その中で、がんの治療効果の向上とともに抗がん剤の副作用軽減に向けた研究も行ってきた。

共同研究では、動物実験において抗がん剤に誘発される脱毛がαリポ酸誘導体などの新規抗酸化剤投与によって抑制し、その際に、皮膚の炎症細胞浸潤の軽減、毛根・毛幹障害の抑制、酸化ストレスの抑制、アポトーシス(細胞の脱落死)誘導の抑制などが生じていることなどについて具体的に検証する。同時に、抗がん剤の副作用による脱毛や痛みのメカニズムと「αリポ酸誘導体」の作用などの解明に取り組む。

抗がん剤による脱毛は、細胞の増殖が盛んな毛母細胞において副作用として脱毛が生じる。また、抗がん剤治療時の脱毛は、がん患者に心理的苦痛を与え、抗がん剤を拒否する要因ともなるなどその予防や治療法の開発は大きな課題となっていた。

そうした中で大分大学医学部の研究チームは、αリポ酸誘導体の生体内エネルギー代謝やレドックス制御への関与、抗酸化作用、抗がん剤誘発脱毛に対する抑制効果などについて動物モデルを用いた基礎実験で明らかにした。

一方、アデランスは、CSR活動(企業の社会的責任)の一環として2002年から全国の病院内に順次、理美容室を開設して抗がん剤治療を受けた患者から脱毛ケアやカツラ装着などの相談に乗ってきた。

こうした活動の中で、大分大学の抗がん剤副作用による脱毛の抑制や痛みを軽減させる研究に感銘を受けて共同研究をスタートさせたもの。αリポ酸誘導体は「動物実験において抗がん剤脱毛を抑える効果を持ち合わせて抗炎症作用があるため、炎症を抑えることができる。製品化できれば、抗がん剤治療を受け入れやすくなる」としている。

同社は、東大や東工大などともスカルプケアサイエンス分野で共同研究を行っており毛髪に関わる研究成果が待たれる。

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