【連載】化粧品各社のイノベーション研究【1】化粧品業界、安心安全を売る時代に

2015.11.13

特集

編集部

“消費のコメ〟を代表する化粧品の国内製造業者数は、平成24年3月末で3455事業者(厚労省調査)に上る。このうち、業界団体の日本化粧品工業連合会に加盟している化粧品メーカー数は、1102社(2014年4月現在)を数える。

また、化粧品出荷額(図1)は、経産省の生産動態統計で2004年から2008年まで1兆5000億円前後で推移していたが2008年のリーマンショックを契機に減少に転じ、最近では1兆4000億円前後で推移している。
品目別化粧品出荷比率(2013年=図2)は、皮膚化粧品が37%を占め、頭髪用化粧品26%、仕上げ用化粧品31%、特殊用化粧品5%、香水、オーデコロン類0.5%となっている。
図1化粧品出荷額 (1)種類別出荷高

大手5社で国内市場の約47%を占める寡占状態にあるが、少子高齢化の進展で需要の伸びは鈍い。
このような環境から、大手化粧品メーカーを中心に企業買収(M&A)を含めて海外展開を加速。ここへきて海外化粧品企業の買収意欲は、一時期に比べて落ち着きを取り戻しているが新興市場国(BRICS)中心に引き続きM&A意欲は強い。同時に、イスラム認証の取得によるイスラム圏市場への進出は、グローバル化がさらに進展していることを象徴する。先行き、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の発効で、アジア経済圏の創出は、化粧品需要を含めて多大な経済効果をもたらす期待が高い。日本のおもてなし文化やアニメ・漫画に登場する日本人の女の子のかわいらしさに裏付けられた“かわいい化粧〟などを発信することで、新たな化粧品需要を取り込む可能性がある。
一方で、国内への海外旅行客増加は、化粧品を含めて爆買現象を創出し、化粧品の需要を海外旅行客に支えられるなど新たな消費・購買現象を見せている。
この爆買現象は、円安を前提に考えた場合、引き続き継続すると見られるほか2020年の東京オリンピック開催による経済効果で、先行きの国内化粧品需要は、上昇に転じる公算が強い。また、化粧品成分の開発やネット販売を要因に、異分野から化粧品分野へ新規参入する企業が相次ぐなど引き続き新規参入の意欲は強い。
こうした化粧品を取り巻く環境が明暗織りなす中で、化粧品業界にとって最大の課題は、化粧品の安心・安全問題である。
化粧品の原料や素材、成分が肌にどのような影響を及ぼすのか、白斑問題や毛髪剤のアレルギ―問題などについて業界あげて安心・安全対策を講じていく必要がある。
商圏がグローバル化に伴ってさらに、拡大傾向を辿り大きく変革・変貌(イノベーション)する中で、国際的な品質・信頼性保証は、製造物責任者(PL)としてこれまで以上に前面に押し出して訴求し、啓蒙していくことが羨望される。それがまた、消費者を引き付け確実に需要に繋げる道でもある。
これまでのような欧米の亜流を組んだ商品(化粧品)のブランドを前面に押し出して売る時代ではない。商品の品質、信頼性をもとに安心・安全を売る時代へと大きく舵を切って行く必要がある。

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