【連載】開花するか遺伝子(DNA)ビジネス(4)10年間に1100億円投入iPS細胞国家プロに

2013.04.4

特集

編集部

10年間に1100億円投入iPS細胞国家プロに

ここへきて遺伝子検査分野で新たな市場が創出されている。 ノーベル賞医学・生理学受賞の山中伸弥京大教授が発明した皮膚細胞から臓器を作り再生医療に道を開く万能細胞(iPS細胞=人工多能性幹細胞)の作製技術を基盤としたヒトiPS細胞作製の解析・培養装置やiPS試薬の販売、iPS細胞作製の受託試験サ―ビスに乗り出す企業がなだれ込んできた。

iPS細胞ビジネスに医薬、バイオなどなだれ込む

iPS細胞の研究を国家プロジェクトとして向こう10年間で1100億円の支出を決めた政府は、ここへきてiPS細胞を再生医療に生かす工程表を策定し、10年以内に立体的で臓器機能を持つ肺や腎臓、脳などをiPS細胞で作製する技術の確立を目指す。

今年一月の総合科学学術会議でiPS細胞の実用化について説明した山中教授は「実現が最も早いのが加齢黄斑変性の治療に使う網膜色素上皮細胞の臨床研究で実用化は1年から2年になる。また、心筋梗塞の治療に使う心筋の臨床研究は、3年から5年になる見通し」と語った。
工程表の策定と合わせて政府は、現在、独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)が構築し、保有している約3万個のDNAと産業総合研究所が構築中の約10万種に及ぶ天然化合物を活用するなどしてiPS細胞の備蓄体制を2年以内に構築し、日本人の大半をカバーする細胞を10年以内に構築することも決めた。
山中教授のiPS細胞研究をさらに推進するため文科省は、2013年度予算に200億円を計上し支援を行う。

一方、iPS細胞を使って体の機能を取り戻す再生医療や新薬の開発、病気の解明などに応用しようとiPS細胞の特許約250件を管理する「iPSアカデミアジャパン」(京都市、社長村山昇作氏、2008年設立)に特許の使用権許諾を求めて国内外の製薬、研究機関、検査装置、バイオメ―カ―などが日参している状態。
同アカデミアジャパンは、京大と大和証券、三井住友銀行、エヌ・アイ・エフSMBC三社が、iPS細胞の実用化を支援する目的で設立した。
同社は、これまで大日本住友製薬やタカラバイオ、リプロセル、米国の研究機関ニューヨークステムセルなど欧米の研究機関を含めて70社(2012年度)と特許の使用権契約や40社と共同研究契約を交わした。また、年間の特許申請料が5千万円にのぼることから不足分を補うため、相互利用契約(クロスライセンス契約)に乗り出している。
同社では「ノーベル賞受賞を契機に特許の使用権許諾を求める企業が相次いでいる。iPS細胞実用化の期待が高いことを証明するものだ」(白橋取締役)と嬉しい悲鳴を上げる。2年後の2015年度までに、国内外合わせて欧米の大手製薬会社や研究機関を含めて100社と特許の使用権契約交わす計画。特許のライセンス料数入は、現在の2倍、約400億円に達する見通し。

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