【連載】化粧品各社のイノベーション研究【12】ホソカワミクロン② ~マテリアル事業部が司令塔となり化粧品・育毛剤事業展開~

2016.02.16

特集

編集部

ホソカワミクロン「PLGAナノ粒子」ホソカワミクロンの薬物伝送システム(DDS)のコア技術やノウハウは、晶析現象(Emulsion Solvent Diffusion= ESD 法)で作製されるPLGA (乳酸・グリコール酸共重合体)ナノ粒子(写真)をベースとした、同社の中枢技術といえる。
中でも、DDS技術は、薬物をESD 法でPLGA ナノ粒子へ封入できること。同時に、多様な剤形(製剤)へ仕上げられる粉体技術(プラットフォーム)を有する点などに特異性がある。

PLGA ナノ粒子の利用目的は
①薬物を封入することで、生体中での薬物の酵素分解を抑止し安定化すること
②微細粒子であるため、粘膜への高付着性・滞留性による薬物吸収性の向上
③PLGAナノ粒子自体の加水分解制御による内包薬物の徐放によって、持続的治療効果を得ること  などにある。

同社にとってPLGAナノ粒子技術の開発は、多くの権利化された特許を取得し、化粧品や育毛剤の商品開発に応用するなど、至高な機能性化粧品を実現する原動力になった。同時に、同社が化粧品というコンシューマ市場に初めて参入するトリガー(引き金)となった。

現在、同社の化粧品事業の「ナノマテリアル事業」は、PLGA ナノ粒子技術の研究開発をマテリアル事業部傘下の「製薬・美容科学研究センター」が担当。基材のPLGA ナノ粒子と育毛剤等のOEM事業は、「マテリアル事業部営業部」が担当。子会社「ホソカワミクロン化粧品株式会社」が育毛剤等の営業を担当する布陣。
これらのナノマテリアル事業全般について、「マテリアル事業部」が司令塔となり、事業を一元的に管理、推進する体制を敷く。

こうした化粧品のコア技術の開発とコンシューマ市場への参入について、商品投入を含めて時系列に見ると、2001年に「インスリン封入PLGAナノ粒子吸入製剤の基盤技術の開発」のテーマで、助成予算約3億円、開発期間3年のNEDOプロジェクトに採択され、産官学による共同研究を開始。その後、2004年に同プロジェクトの実用化に向けた組織として、新たに製薬・美容科学研究センターを設立、本格的なPLGAナノ複合粒子の応用研究と量産技術の開発に着手した。また、2004年春に、DDS製剤化技術の知見を応用し、ビタミンC等を封入した機能性PLGAナノ粒子パウダーを商品化し、販売を開始。同年秋には、自社ブランドスキンケア化粧品「ナノクリスフェアシリーズ」を市場に投入した。

2006年春からは、自社ブランド育毛剤「ナノインパクトシリーズ」を上市し、インターネットによる通信販売を通じて事業を本格化した。また、同年には、奈良県五條市に五條工場を建設し、化粧品製造許可及び医薬部外品製造許可を取得した。
さらに、PLGAの特性を活かした商品開発を促進し、2012年3月に化粧品OEM事業の拡大を図るため、法人向けOEM販促用ツールとしてジェル状美容液「プルガンス® オールインワンジェル」と粉状美容液の「プルガンス® プレストパウダー」を開発し、高品質を前面に押し出してOEM事業で攻勢をかけている。

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