【連載】化粧品各社のイノベーション研究【14】ミルボン① ~2つのビジネスモデルで成長を牽引~

2016.03.2

特集

編集部

株式会社ミルボン(東京都渋谷区)は、1960年7月の創業以来、顧客第1主義を掲げ、事業領域を理容室や美容室、サロンなどのプロフェッショナル市場(美容室向け市場)で毛髪化粧品事業を展開してきた。以降、現在は「ヘアケア用剤」、「染毛剤(ヘアカラー)」及び「パーマネントウェーブ用剤」などの業務用ヘア化粧品を約100社の代理店を通じて同社の戦略的重点サロン「ミルボンサロン」などに対し卸販売するなど、プロ市場でトップの座に躍り出た。

その原動力になっているのが営業・教育担当者(フィールドパーソン)による営業システム「フィールドパーソンシステム」の推進と商品・技術の基本開発コンセプト「TAC(Target Authority Customer)製品開発システム」の2つのビジネスモデルである。

フィールドパーソンシステムは、美容サロンに商品を販売するのみならず、家庭向けヘアケア製品の販売窓口と位置づけて、美容サロンが抱える経営課題についてコンサル活動を通じて解決するサロン経営対象の営業システム。1984年から美容サロンに対する営業と経営サポートに活用している。

同システムは、取引先の美容サロンに対してトレンド情報、売上伸長方法、美容技術、スタッフ育成研修のプログラム開発などを提案するとともに、セミナーやイベントを実施しながら美容室の課題を解決し、収益向上に繋げている。

もう一方のビジネスモデル「TAC製品開発システム」は、市場・顧客のニーズを反映した商品や技術を開発することを基本コンセプトに、同社が独自に編み出した研究開発のシステム手法。

無題現在、同社の研究開発体制は、開発研究室、商品評価室など5部門(表参照)が有機的連携を図って、顧客・市場ニーズを反映した商品開発を行っている。特に、TACシステムによる商品や技術の開発にあたり、ユニークなのが業界トップの技術やノウハウを持つ美容師を日本全国から探しだし、その美容師の感性と技術を社内の研究開発部門の研究者、技術者が科学的に分析し、誰でも習得できるように標準化を図って商品化に繋げている。また、単に製品を開発するだけでなく新しい美容技術(システム)も開発するなど高度な技を生み出している。

同社が美容師と商品や技術を共同開発するTACシステムに乗り出したのは、今から約30年前の1988年。毛髪化粧品のシーズやニーズは、「美容の実践の現場である美容師・美容室にすべての答えがある」として卓越した技を持つ美容師との共同戦線に打って出た。

美容師が顧客の髪をどのように扱い、美しいデザインに仕上げるのかを研究し、その美容師の技術やノウハウを製品に落とし込む。そのため、研究員・技術者が何度も美容室を訪問して美容師から直接ヒアリングしながら商品化を図っている。

同社の高成長の原動力は、ユーザーのオリエンテッド(顧客志向)を反映した2つのビジネスモデルが歯車の両輪になって好回転していることが大きい。

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