【連載】化粧品各社のイノベーション研究【16】ノエビア② ~R&Dのイノベーション加速、東京研究所で遺伝子研究~

2016.03.24

特集

編集部

“美と健康の創造”に取り組むノエビアは、研究開発領域でイノベーションを加速している。中でも、研究開発部門の変革を象徴するのが、未来型コミュニケーションラボと位置づける東京研究所の新設(2015年4月)といえる。

東京研究所は、化粧品や健康食品、医薬品の新たな研究開発拠点として「かながわサイエンスパーク内」(神奈川県川崎市)に開設した。
企業や大学の研究者との幅広いコミュニケーションを図り、企画から研究、開発までを一貫して行う新たな研究体制を構築する。同時に、産学連携で、脳科学、神経科学など先端科学の研究を強化して顧客満足度の高い商品やサービスの開発を目指す。

同研究所では、遺伝子研究に継続して取り組む。肌のはたらきや構造の分析などを進めることで、遺伝子レベルで素肌の美しさを追求する。また、「長寿との関係」が重視されている「START―1」という遺伝子の研究や美白に関する遺伝子研究、細胞のエネルギー産出を司る「MAF遺伝子」のはたらき、成長ホルモンなどの研究に力を入れる方針。

総合研究所ノエビアは、2013年4月に常磐薬品工業の研究部門と統合しグループ全体の総合研究所(滋賀県東近江市=写真)として強化・再スタートを切った。

両社の研究部門の統合は、ノエビアの研究開発部に常磐薬品工業の開発研究所を統合し、新たにノエビア研究開発部に
①化粧品・医薬品部外品開発グループ
②新素材開発グループ
③有効性開発グループ
④医薬品・食品開発グループ
⑤薬理研究開発グループ   を配置した。

現在、総合研は、化粧品・医薬部外品・医薬品・食品の基盤技術、処方開発、安全性・安定性評価試験などを行っている。

こうしたグループの総合研究所や東京研究所に加え、一般的にあまり知られていない「南大東島海洋研究所」や「鈴鹿高山植物研究所」、「北見オホーツク北方植物研究所」「北海道暑寒別岳パイロットファーム」の4研究所を保有して植物や海水から有効成分を抽出する研究を行うなど、他社には見られないユニークな研究活動を展開している。

南大東島海洋研究所(沖縄県島尻郡)は、独自のプラントを使って高品質な天然海水塩や海水濃縮ミネラルなどの有効成分を抽出する研究や島固有の植物を研究対象としてサプリメント・医薬部外品・化粧品への応用研究を行っている。

鈴鹿高山植物研究所(三重県鈴鹿市)は、鈴鹿山麓に自生する植物や世界中から送られてくる植物の有効成分の抽出と熟成を行っている。

北見オホーツク北方植物研究所(北海道北見市)は、北海道古来の伝承薬用植物やオホーツク海沿岸地方など亜寒帯湿潤気候に生息する植物、海藻類に関する 研究に取り組む。

2005年から運営を始めた自社農場「北海道暑寒別岳パイロットファーム」(北海道増毛郡)は、2014年⒑月に有機JAS圃場認証を取得、オーガニック栽培による安心・安全な原材料開発に取り組んでいる。

ともあれ、総合研究所の再編・強化と総合研究所を中軸にしながら、広域にわたる4研究所の連携による素材の探索や有効性評価、使い心地にこだわった安心・安全な製品の開発まで一貫した研究体制を確立。加えて遺伝子研究などに取り組む東京研究所を新たに開設し、次世代のR&D強化にさらに打って出た。
今後、自然派化粧品を標榜する同社の研究開発成果に一段と期待が高まる。

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