【連載】化粧品各社のイノベーション研究【17】マンダム① ~「ミドル脂臭」の発生メカニズム解明、臭気判定士が活躍~

2016.03.29

特集

編集部

140328_133606男性用化粧品でトップの座にある株式会社マンダム(大阪府大阪市中央区)は、男性の汗についての永年の研究や商品開発で著しい成果を上げている。同社の技術開発センターにいる7名の臭気判定士(国家資格=写真)が、ミドル男性(30~40歳代)の後頭部付近(首の後ろ)から発生する油臭いような汗の臭いの変化に着目して、ミドル男性特有の汗の臭いを発見した。

同社は、ミドル男性特有の汗の臭いを男性の加齢化に伴う体臭(加齢臭)と違うことから、第3の臭い「ミドル脂臭」と名付けるとともに、「ミドル脂臭」の臭気成分が「ジアセチル」という原因物質であることを独自の解析手法で特定した。

ミドル脂臭の原因物質「ジアセチル」は、頭皮に存在するブドウ球菌などの皮膚常在細菌が汗に含まれる乳酸を代謝・分解することで発生する、その発生メカニズム(図)を解明。同時に、数種のフラボノイド含有植物エキスが、皮膚常在細菌の「乳酸代謝」を阻害し、ジアセチルの発生を効果的に抑制する成分であることを見出した。

「ジアセチル」は、使い古した油のようなニオイで、酢の主成分である酢酸の100分の1の量でもニオイを感じ、加齢臭の原因物質「2-ノネナール」に比べて空気中に広がりやすく、皮脂(中鎖脂肪酸)と共存することで臭いが増幅するなどの特徴がある。

ただし、ミドル脂臭の原因成分「ジアセチル」に対して、臭いが敏感な人と鈍感な人が存在し個人差があることも明らかになった。

男女間や年代間における体臭に対する感受性の違いを明らかにするため、健常な日本人男女55名を対象にヒトの主要な体臭成分である「ジアセチル」と「イソ吉草酸」、「2-ノネナール」の嗅覚値を解析した。

その結果、ジアセチルに最も鈍感な人は、最も敏感な人が判別できる濃度の1万 倍の高い濃度でも、そのニオイを判別することができなかった。なお、ジアセチルに鈍感な人の割合は、男性で35%、女性で21%、男性の3 人に1 人、女性の5 人に1 人は、ジアセチルに鈍感であることが判明した。

同社では、ミドル脂臭の原因解明に加えて、ミドル脂臭の抑制技術をミドル男性向けのデオドラント剤などに応用して「ルシード ニオイケアシリーズ」として商品化を図った。

「ルシード ニオイケアシリーズ」は、「薬用デオドラントボディウォッシュ」「薬用スカルプデオシャンプー」「ヘア&スカルプコンディショナー」など6品目をリニューアルし、パッケージを一新して現在、ドラッグストアやコンビニ、スーパーなどで販売中。

こうした汗や臭いの基礎研究を通じて、臭いの原因究明から臭いの正体を突き止めるのに3年、発生のメカニズムを解明するのに1年、発生を抑制する成分を見つけ商品化にこぎつけるのに2年の合計6年もの歳月を費やした。

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