【連載】化粧品各社のイノベーション研究【22】ロート製薬⑤~奨学金給付で震災遺児の進学に光を当てる~

2016.04.28

特集

編集部

ロート製薬は「事業活動の発展だけでなく社会の公器としての社会的責任を果たすことこそが、企業としての使命である」として、東日本大震災で親を亡くした震災遺児を対象とした奨学金の給付制度に取り組んでいる。

同社は、2011年3月の東日本大震災が起きた翌年(2012年4月)にカゴメ、カルビーと共同(2013年4月からエバラ食品参加)で、財団法人「みちのく未来基金」を設立した。

同基金は、東日本大震災で親を失い、被災した震災遺児が大学や短大、専門学校に進学する際、入学金、授業料(上限300万円)などの奨学金を給付(返済不要)する支援活動を始めた。

今年4月で満4年を迎えた同基金による給付活動は、これまで累計で、434名の震災孤児に奨学金を給付。約1800名と見られる震災遺児のうち、25%の進学率を実現した。

同基金を支えている個人寄附者は累計で約3500人、企業・法人寄附者が約750社にのぼり、寄附金総額も累計で24億円に達した。

しかし、震災遺児を全員進学させるためには、累計で約40億円にのぼる資金が必要になっている。引き続き、基金の運用面で、資金確保が大きな課題となっている状態。

同社では「現在、やむを得ない理由で、東北以外の県に住んでいる震災遺児が多数いる。こうした全国各地に散らばっている震災遺児を探しながら、基金による給付と進学の夢を実現できるようさらに啓蒙を図って行く考え。同基金は、運用が20数年を超える長期の基金である。引き続き、多くの個人、企業の協力を仰ぎながら基金の充実に努めて行く方針」という。

みちのく未来基金の集い同基金の設立当初は奨学金の給付が主たる目的だったが、現在では、震災遺児の意見を聴き合わせて震災遺児同士の交流の場を作ることが活動の主体になっている。(写真=給付金を受けた震災遺児の第4期生集い)

同社は、2011年に「震災復興支援室」(現広報・CSV推進部内に設置)を設置、「CSV」(Creating Shared Value=共通価値の創造)活動の重要なテーマとして、基金運用による震災遺児の長期的な生活と勉学の支援に乗り出した。

CSVという共通価値の創造は、社会的な価値と企業にとっての価値を両立させながら、企業の事業活動を通じて社会的な 課題を解決していくことを目指す新たな経営理念。戦略的CSRの一種として注目されて いる。

同社は、こうしたCSV活動や社会貢献活動(CSR活動)について多くのステークホルダー(利権関係者)と協調して取り組むため、2015年8月にCSR・CSV活動の紹介と活動への参加を狙いに専用のウエブサイトを立ち上げている。

 

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