【連載】化粧品各社のイノベーション研究【30】石田香粧③ ~6月中にもイスラム認証化粧品取得、小売店で販売へ~

2016.06.29

特集

編集部

石田香粧は、イスラム対応の化粧品「メラティ」を開発し、展示会の出店、販促・マーケティングなど新たなイノベーションに乗り出している。
無題ハラル化粧品「メラティ」の開発は、埼玉県と城西大学との2014年度、産学官共同事業「ハラル化粧品開発プロジェクト」に参画して商品化(2015年11月=写真)したもの。
商品化したのは、「メイク落とし」「化粧水」「日焼け止め」の3種類。
洗い流し不要でふき取りタイプ仕上げの「メイクアップリムーバー」、メイクをふき取った後に使用する「フェイスローション」、日焼け止めの「UVケアクリーム」は、いずれもさっぱり感が特徴。原料にイスラムの戒律で禁じられている豚やアルコール等は使用していない。

しかし、商品化するまでには2年近くの期間を要した。多くの化粧品には、さっぱりとした清涼感を出すためにアルコールが入っているが、ハラル対応の化粧品には使うことができない。
そこで、代わりになるものを探した結果、植物性の保湿剤であれば清涼感を出せることが分かった。数種類の成分を混ぜ合わせ、数日間おくと粒状の固まりが生じるなどの不具合が発生。また、滑らかなクリーム状にならないなど悪戦苦闘した。
使う成分と配合する割合を80通りほど試し、うまく混じり合う配合を見つけるまでに1年半かかり、ようやく開発にメドをつけた。

同社が ハラル化粧品の開発を決めたのは、イスラム市場の大きさに加えて、イスラム教徒の女性が化粧品を使う回数が多いことも開発の要因になった。
イスラム教徒の女性は、礼拝前にメイクを落として身を清めるのが礼節。礼拝は1日に5回行われ、礼拝が終わるたびに再びメイクをしなおす女性が8割にのぼる。
こうしたイスラム市場の大きさとイスラム女性の化粧品消費量が多いという背景から、イスラム対応化粧品の開発に取り組んだ。また、同社は、ハーブなど自然由来の原料を使って商品化するなど、ハラルに近い製品を開発・販売してきた自負もあって、ハラル化粧品の開発を加速させた。

現在は、ハラル化粧品の販売ビジネスに力を注ぐ。国内外の展示会に出品して、イスラム教徒の需要開拓と販促を強化。また、2020年の東京オリンピックを見据えて、イスラム圏からの観光客に対するインパウンド需要の取り込みやイスラム認証取得によるイスラム圏への輸出など、ハラル化粧品ビジネスを段階的に取り組む。6月中にも「メラティ」のハラル認証を取得する方針。また、今後、国内販売について、総代理店を通して小売店等の「ハラルコーナー」で販売する予定。現在、具体的な検討を始めている。

中小の化粧品メーカーで、ハラル対応化粧品のビジネス展開に取り組むのは極めて珍しいケース。今後、ハラル化粧品の需要をどの程度、取り込んで収益基調に乗せて行くか、新たなイノベーションの波に期待するところが大きい。

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