【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【12】海月研究所①~廃棄処分のクラゲから化粧品原料等を抽出~

2016.08.30

特集

編集部

海月と書いてクラゲと読む。株式会社海月研究所(神奈川県川崎市、代表者木平孝治氏、設立2009年4月)は、このクラゲから抽出される素材「ムチン」と「コラーゲン」を核に化粧品を開発して販売に乗り出すなど、天然高分子素材ベンチャーとしての成長が注目されている。

日本近海で大量発生し、漁業に深刻な被害をもたらす巨大クラゲ「エチゼンクラゲ」や原子力・火力発電プラント、臨海プラントなどの取水を止め、プラントの機能低下をもたらす「ミズクラゲ」は、利用価値がなくクラゲ廃棄物として取り扱われてきた。

海月研究所「ムチン」そうした状況下に理化学研究所の研究グループは、クラゲ中に糖たんぱく質「ムチン」(写真)という新物質を発見し、抽出に成功。

一方、独創的シーズ展開事業や大学発ベンチャー創出推進事業などの補助事業を推進する文科省所管の独立行政法人「科学技術振興機構」(JST)は、2006年度から2008年度の2年間、研究開発課題「クラゲ廃棄物から抽出した新規ムチン生産の企業化」について、理化学研究所に研究開発を委託。

ムチンは、唾液や消化液など動物粘液の主成分である糖タンパク質のこと。食品化学では、オクラや里芋のネバネバ成分もムチンと称しているが、実際は高分子多糖類に短いタンパク質がつながっているもの。

JSTから委託を受けた理化学研は、ムチンの研究開発を実施し、技術面で糖鎖修飾基を確定してムチンの全体像を明らかにするとともに、高品質ムチンの精製法を確立して開発用サンプルの提供を可能にした。

この開発用サンプルにより理化学研究所は、東海大学医学部とムチンの関節症治療への応用研究を行い、医療用途への道を開いた。

ムチン大量製造の技術開発においては、協力企業が年間処理量50トン(クラゲ湿重量)のクラゲ由来ムチンとクラゲ由来コラーゲンの製造プラント(協力会社工場内設置)を完成させた。また、調査・事業化活動を行い、各地の漁協や電力会社の参加を得て、クラゲ原料の安定確保や製品開発および販売先確保を目的として、医用材料や医薬品、食品添加物、化粧品企業などのネットワーク構築を行った。

こうした理研でのプロジェクト研究の成果を基に、クラゲ由来新規ムチン糖タンパク質やクラゲ由来コラーゲンなどを医薬品・化粧品・食品等へ有効活用する目的で、2009年4月に現法人を設立、本格的な事業展開に乗り出した。

 

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