【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【29】コスメディ製薬① ~マイクロヒーラ化粧品開発、冴える技で国から表彰~

2016.11.10

特集

編集部

コスメディ製薬株式会社(京都府京都市、社長 神山文男氏)は、京都薬科大学薬剤学教室における基礎研究を技術シーズとして、2001年5月に設立されたバイオベンチャー。現在、経皮吸収型化粧品や経皮吸収型医薬品、粘着性素材などの研究開発に取り組んでいる。いずれも同社が得意とするマイクロニードル技術を駆使して開発した。

肌の保水に欠かせないヒアルロン酸は、加齢とともに減少する上に外から補おうとしても高分子のため、皮膚に浸透しにくく肌表面の保水にしか効果がないことが化粧品開発分野の長年の課題となっていた。また、経皮吸収製剤(貼り薬、塗り薬など)は、インフルエンザワクチンやインスリンなど粒子の大きな薬剤を有効に皮膚内に入れることは不可能だった。

マイクロニードルそこで同社は、これまで医薬品の開発分野で研究をすすめてきた最新テクノロジー「溶解型マイクロニードル」(写真)技術に着目。この技術を化粧品に応用し、高分子のままのヒアルロン酸を数百ミクロン単位の小さな針に結晶化する「ヒアルロン酸マイクロニードル」の工業的製法を世界で始めて確立した。
数百ミクロンの超微細針は、皮膚本来の成分であるヒアルロン酸やコラーゲンなどから組成されているため、肌に貼付すると皮膚内部で溶け出す。そのため、針に薬剤成分を含ませておけば、針が溶け出す際に簡単・安全に皮膚内にリリースすることができる。
この技術を利用することで、肌からの投薬が難しかった高分子薬剤であっても直接皮膚内部まで搬送・浸透することが可能となり、注射に代わる新たな投薬手段として注目されている。

すでに同社は「マイクロニードル技術」を用いたニキビやシミなどの部分専用化粧品「マイクロヒーラ」(スポットケア化粧品)を化粧品会社にOEM供給している。2015年にはニプロとの間で、マイクロニードル技術による医薬品の経皮吸収製剤の製品化を目的とした独占契約を締結するなど大きな成果を収めている。

こうした同社の粘着剤に関わる経皮吸収促進技術・経皮吸収評価技術などについて独占的に開発し、皮膚から薬物を安全かつ効率的に送達する経皮吸収製剤化技術の優秀性が認められて、2016年に「大学発ベンチャー表彰制度」(2014年産省創設)でNEDO長官賞を受賞するなど、産学官に企業名が知れ渡るようになった。

同社の独自技術「マイクロニードル技術」を駆使して、ヒアルロン酸が肌に浸透するシート状の経皮吸収型化粧品「ダーマフィラー」「クオニス」(共に商品名)を実用化している。
シート状のダーマフィラーを肌に貼るとチクチクとした感覚とともにヒアルロン酸やコラーゲンなど必要な成分が一晩かけてゆっくりと溶けだし、肌の内側まで浸透。内側から肌を押し出すように肌に潤いとハリを与える。

無題同社は、ダーマフィラーの肌の潤い、ハリ効果についてモニターテストによる検証を行っている。モニターテストは、週2回、30〜60歳の女性を対象に行ったところ、個人差があるものの肌が潤いハリが増加するなどの実証を得た。図にダーマフィラーの角質層の水分含有量を示す。

 

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