【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【33】天然新素材科学研究所① ~キトサンから生まれた新化粧品原料「エクセルキトサン」開発~

2016.11.24

特集

編集部

天然新素材科学研究所株式会社(静岡県島田市、2004年3月設立)は、大学(静岡県立大)における研究成果を礎に天然物の持つ優れた機能を生かして、工業製品向けに新しいタイプの機能化技術を開発し、事業化する目的で設立した大学発ベンチャー。

両社は、キトサンと脂肪酸が化学的に結合し、それぞれの機能を高める構造をした今までにない新しいタイプの素材(乳化剤)「エクセルキトサン」(キトサン誘導体)を共同で開発し、化粧品の原料として化粧品メーカーなどに直接販売している。

殻類の殻などに含まれる多糖類で、動物性食物繊維のキチンを加工したキトサンから生まれた新しいタイプの化粧品新原料「エクセルキトサン」は、化粧品原料として多くの特性がある。

エクセルキトサンの特性として
①エクセルキトサンは、強電解性であるため、酸性のみならず中性、アルカリ性でも水に溶解する。同時に、水溶液の物性は、各種の物質と共用することが容易
②長鎖脂肪酸をキトサン1 残基当たり10~20% 結合しており、オイルに対して強い乳化力を示し、エマルション( 乳化液) は長期間安定。また、脂肪酸の存在で皮膚とのなじみが良くなり、キトサンに見られる様なつっぱり感が無い
③キトサンのアミノ基を多数残す事及び四級アンモニウム基の導入により、抗菌性や保湿などキトサン本来の機能として知られる様々な薬理的機能を保持している
④疎水性表面を持つ二酸化チタンや酸化亜鉛等の粉末の表面に吸着し、水中で安定に分散させる
⑤正電荷を持つことにより、皮膚や毛髪との相互作用が大きく、化粧品の残存性が良くなる
⑥親水性の大きなキトサン主鎖と四級アンモニウムイオンの存在により、高い吸水性、保水性 などの特性がある。

図・細胞生存率エクセルキトサンの皮膚に対する安全性については、ヒト皮膚組織三次元モデルを用いた細胞生存率の試験(図参照)を行った結果、乳化能を持つ一般的な低分子の界面活性剤と比較して「極めて安全な乳化剤であることが分かった」という。

こうしたエクセルキトサンの特性から利用・応用可能な化粧品類として同社は
①スクワランの様なオイルの乳化剤を挙げる。0.52% 程度を添加した水溶液中にオイルを分散した後、高速ホモジナイザーや高圧乳化装置を用い、ホモジナイズすることにより安定なエマルションを作ることが出来る。同時に、界面活性剤フリーの化粧水や乳液などの化粧品製造に有効
②表面を撥水化した二酸化チタンや酸化亜鉛の粉末とエクセルキトサンの水溶液を混ぜてホモジナイズすることにより、分散液を安定に作れる。表面をエクセルキトサンで覆った固体粒子は、正電荷と皮膚との相互作用により残存性が良く、サンスクリーン化粧品の製造に有効
③カーボンブラック等の固体粉末も二酸化チタンの場合と同様に、エクセルキトサン水溶液できれいに分散する。へアマニキュア等への応用が可能
④エクセルキトサンは、化学構造がカチオン化セルロースと類似しており、毛髪のコンディショニングに有効に働く。また、肪酸がキトサンに結合しているため毛髪にツヤやコシを与え、滑らかで潤い感を実感出来る髪質を作り出すなど、化粧品類への応用について実証済み。

 

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