【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【34】植物ハイテック研究所② ~ユーグレナが植物研を買収、生物の形質転換技術狙う~

2016.11.30

特集

編集部

ユーグレナは、2013年9月に1100万円で植物ハイテック研究所の全株式を取得し傘下に収めた。買収前の2012年12月期における植物ハイテック研究所の業績は、売上高1100万円、営業利益1600万円の赤字。会社設立後、業績推移は、本業での儲けを示す営業段階で赤字を積み重ね儲けがない状況にあるなど、台所は火の車だった。

こうしたわずか1000万円の売り上げしかなかった燦燦たる状況の植物ハイテック研究所を2013年9月にユーグレナがどうして企業買収に踏み切ったのか。

買収の理由は
①微細藻ミドリムシの形質転換による光合成能力、油脂生産性の向上、新たな有用物質生産手法の確立を図る
②ミドリムシの形質転換によるユーグレナの新規有用物質生産手法の確立
③植物ハイテックは、奈良先端科学技術大の知的財産権を優先的に活用できる権利を有しており、新たに生まれる発明の事業活用が図れるメリットがあると判断したことによる。

ユーグレナは、微細藻類ミドリムシの形質転換(ある系統の細菌から抽出したDNAを他の系統の細菌の培養液中に加えて取り込ませると、取り込んだ細菌の遺伝形質が供与菌のほうの形質に変化する現象)による光合成能力、油脂生産性の向上、新たな有用物質生産手法の確立などを推進するうえで、奈良先端科学技術大の次世代の植物(葉緑体)形質転換法を駆使したバイオ燃料「ヤトロファ油脂」の生産性向上技術などが今後の研究開発に生かせると判断して、買収に踏み切った。

一方、植物ハイテック研究所は、ユーグレナの傘下に入ることで得意とするカラハリスイカの抽出液の応用研究や生物の形質転換技術の研究などを継続的にできることから、買収に前向きに応じた。

ここへきてユーグレナは、買収成果としてカラハリスイカによるインフルエンザウイルスの増殖を抑制する効果を明らかにするなど、インフルエンザウイルス対策の新たな効果として公表(2016年10月)した。

カラハリスイカによるインフルエンザウイルスの抑制試験は、インフルエンザウイルスの培養時にカラハリスイカ搾汁液を添加し、その後の増殖状態について測定を行った結果、カラハリスイカ搾汁液の濃度に応じてインフルエンザウイルスの増殖抑制を確認したもの。引き続き同社は、カラハリスイカの効果的な利用を目指し、研究開発を行っていく方針。

ともあれ、植物ハイテック研究所は、大学の教授らが自らの研究開発を事業化するため法人会社を設立して果敢に事業挑戦した。しかし、法人設立後9年で、業績不振から企業売却に踏み切らざるをえなくなり、ユーグレナの研究開発部門として再スタートをきった。

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