【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【47】オーガンテクノロジーズ① ~オーガンテクノロジーズと理研が脱毛症の再生治療で共同戦線~

2017.01.24

特集

編集部

大塚化学100%出資のベンチャー「オーガンテクノロジーズ」(東京都港区、2008年4月設立)は、生命科学の研究領域の中でも「器官再生医療」の技術創出を重点研究課題として位置付け、再生医療で脱毛症治療の実用化目指して研究開発に取り組んでいる。

同社は、脱毛症の治療技術を確立するため、独立行政法人理化学研究所(理研)の研究員を役員(取締役)に迎え、理研と一体となって「器官原基法」による脱毛症の再生治療に共同で取り組んでいる。

理研は、細胞操作により、臓器・器官のもととなる器官原基を再構築するための「器官原基法」を世界に先駆けて開発した。

「器官原基法」とは、臓器・器官のもととなる「器官原基」を再生する細胞操作技術。毛髪は、紫外線や気温の変化といった外的な影響から皮膚を守る生理的な機能と感覚器官としての機能を持っている。また、毛髪を作り出す器官である毛包は、男性ホルモンの影響で小さく変性し、自己免疫や外傷により破壊されることで、脱毛症を引き起こすと考えられている。

現在、多くの脱毛症は、男性ホルモンの影響を阻害する薬剤や正常な毛包を切り取り脱毛部位に移植する自己植毛術が取り入れられている。しかし「これらの治療技術では全ての症例に有効とはいえず、毛包の数を増加させることができていない」という課題を抱えている。

そうした中、理研は「器官原器法」を開発して、胎児期の歯や毛包原基細胞が自律的に器官発生を再現して、機能的な歯を再生することを実現。また、成体の毛包幹細胞から器官原器法により人工的に再生毛包原器を作製し、任意の皮膚内に移植して皮膚表皮層やその他の組織と正常に連続した毛包を再生させる技術の開発に成功した。

この技術により再生毛包は、周辺組織と適切に接続すると共に、機能的な再生が可能となり、毛髪再生医療の実用化に向けて大きなブレークスルーを与えた。

そこで、同社は、理研の人材と毛包再生技術を受け入れ、理研と一体となって「患者自身の細胞を使って正常な毛包のもととなる毛包原基から毛包を再生する毛髪再生医療の研究」に力を入れて取り組むことにした。

わが国では、世界に先駆けて開発したIPS細胞による脱毛症の研究が高まり製薬、化粧品大手、大手かつらメーカーなどが激しい開発競争を展開している。

果たして同社と理研連合が脱毛症の開発で先陣を切ることができるか、その成否が注目されている。

 

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