【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【51】ナノキャリア③ ~化粧品事業、美容室との提携を強化、業績は低空飛行~

2017.02.16

特集

編集部

ミセル化ナノ粒子技術を応用した医薬品の研究開発で評価の高いナノキャリアが、化粧品開発を加速させたのが2012年7月にアルビオンとの間で化粧品の共同開発契約を取り交わしたことが契機。
化粧品の共同契約内容は、ナノキャリアがアルビオンに対して原料供給と技術を供与。アルビオンは、製品化と販売を担当するというのが契約の骨子。
共同開発契約に基づいて最初に商品化したのが、新美容液「エクラフチュール」(2013年10月)でネット中心に販売。
この販売を皮切りにナノキャリアは、社内に専門部隊の化粧品事業部を設置し、化粧品事業に本格参入の意思を示した。

2016年3月には、毛髪分野に開発領域を広げ男性ヘアケア製品「デプス」4品目を開発し、美容室でのカウンセリング販売やネットでの販売をはじめた。また、同年4月に薬用美容液「イマキュレート」を開発し市場投入した。
こうした共同開発の化粧品は、ナノキャリアの中核技術「ミセル化ナノ粒子技術」に負うところが大きい。

ミセル化ナノ粒子技術は、水に溶けやすい性質を示すポリエチレングリコール(PEG)からなる親水性ポリマーと水に溶けにくい性質を示すポリアミノ酸からなる疎水性ポリマーを分子レベルで結合させたブロックコポリマー(共重合体)から構成された二層構造を有する20~100ナノメートルサイズの球状の集合体。
この分子の集合体「ミセル」の疎水性内核部分に環状リゾホスファチジン酸Naなどの有効成分(薬物)や生理活性物質などを封入し、ナノセスタDDSという最新の薬物搬送システム(ドラッグデリバリーシステム=DDS)を使って皮質や毛根等に浸透させることで、毛乳頭マーカーのアルカリフォスファターゼ(ALP=毛包誘導因子のひとつ)などを活性させる。
ナノキャリアは、化粧品事業について引き続き美容室との提携やメディアへのアプローチを推進して収益向上に繋げていく方針。
ところで、化粧品事業に力を入れているとはいえ、ナノキャリアは、東証マザーズに上場(2008年3月)して以来、業績が一向に向上していない。

今期(2017年3月期)の最終損益は、前期比約14億円損失の約34億円と赤字幅がさらに膨らむ見通し。2008年にマザーズ市場に上場以降、9年間で「収益が黒字に転換したのは一度もない」状態が続いている。

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