【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証③VCがベンチャーに投資ラッシュ、ベンチャーの上場で経済好循環 

2017.03.7

特集

編集部

バブル経済が絶頂期に達した1988年から1990年にかけて銀行、保険、証券系列のVCが未公開の中小企業や会社創業五年未満の歴史の浅いIT、ネットベンチャーめがけて集中的に投資を行った。この結果、1990年度だけで、VCのベンチャー投資額は、3000億円近い2990億円(中小企業庁調査)にのぼった。

VCの投資は、株式公開を準備、計画している中小・ベンチャー企業などが第三者割当増資や起債(転換社債)、株式分割などで発行した株式、社債などを取得して株主になる。ベンチャー企業が株式を公開した段階で取得したベンチャーの株を売却してキャピタルゲイン(株式売却益)を得ることを投資ビジネスの主目的とする。

VCの事業構造は
①国内、米国、アジア等でのベンチャーキャピタル投資やファンド組成・管理
②金融子会社を通じての融資、割賦などの業務
③M&Aに伴うバイアウト投資や法的整理企業、再生可能企業への投資・融資及び未公開企業の不良債権売買ビジネス業務など。

ビジネスの主流を成すベンチャーへの投資は、VCが自己資金を直接ベンチャー企業に投資する直接投資とVCと、年金基金、法人企業などの機関投資家、個人投資家が出資して投資ファンドを組成し、設立した投資事業組合を通じてベンチャーに投資するファンド形態での並列投資が主流。ファンドは、一般的に投資期間が10年間で、投資期間が完了して投資事業組合を清算するのが一般的。

無限責任者として投資事業組合が清算されるまで投資業務の責任を負うVCの収益源は、管理報酬と成功報酬が中心。管理報酬は、ファンド資産の約3%、成功報酬は、キャピタルゲインとして約20%となっている。

未公開ベンチャー企業に対するVCの投資眼目は、技術の信頼性、優秀性と併せて市場での販売、収益性に重きを置いて評価し、投資を実行する。もちろん、株式公開を計画している未公開企業が投資の前提であり3年~5年間の事業計画に受注実績見込みを記載していることがVC投資の絶対条件となる。

未公開企業に対するキャピタルの投資ステージは、押し並べて3段階に分けて投資を行う。第1段階は、事業のスタートを切るための資金調達。第2段階は、収益が見え始め、本格的事業展開を行うための資金調達。第3段は、事業の本格拡大のための資金調達で、上場後の継続成長も見据えた資金誘導。

この3段階のプロセスごとにキャピタルは、未公開企業の事業計画について信ぴょう性、月次決算や資金繰り状態、経営者の経営資質、資本政策などを視点に約2ヵ月程度かけて投資審査を行い、投資の決定を行う。

VCの投資が積極的になった1990年代は、VCが主体となって投資事業組合を設立し、ファンド組成件数が1991年7ファンド、1992年14ファンド、1996年19ファンドが組成された。
しかし、投資事業組合主体によるベンチャー投資は、投資事業組合の設立と投資運用に中心的な役割を担うVCとともに出資者で、出資総額の半分を占めていた銀行、信用金庫、信用組合などの機関投資家や個人投資家なども投資運用に関してVCと共同で無限責任を負うなど問題を抱えていた。また、VCにとってベンチャー企業に投資したものの、計画通りの成長・発展(株式公開や配当など)ができずに頓挫するベンチャー企業のM&Aや未公開株の処理についてもリスクを背負っていた。

しかし、こうしたリスクを抱えながらも1989年から1990年まで続いたバブル期に株などで儲けた資金をベンチャー投資に振り向けて一獲千金を当て込むVCや機関投資家、個人投資家が一斉にベンチャー投資になだれ込み、ベンチャー投資ブームに覆われた。また、事業所系、独立系、外資系などの新規VC設立が相次ぎ、1993年には、国内VC総数が一挙に250社程度にまで増加した。

VCの増加とベンチャーへの投資は、株価収益を狙った中小・ベンチャー企業の店頭市場(*注釈)や第2店頭市場(*注釈)への株式公開を促し上場ラッシュに湧いた。

こうした好循環の経済に政府は、自信を深め、金融支援制度などのベンチャー政策を次々と立ち上げていった。

*注釈

店頭市場
1963年に日本証券業協会が開設・運営。証会社と顧客が証券会社の店頭で、1対1で売買価格や決済方法を決めて行う相対取引(店頭取引)を基本としてスタート。取引所の登録基準、公開基準を満たさない企業のための補完的市場を担った。1976年6月に全国の証券会社187社が出資して、日本店頭証券株式会社を設立し、店頭市場における売買ルールの整備に着手。1998年の証券取引法(現金融商品取引法)の改正で、店頭取引から正式に市場取引所となった

第2店頭市場
1995年7月に開設されたベンチャー向け市場。店頭登録特則銘柄制度に基づき事業内容に新規性や将来性があり売上高に対する研究開発の割合が3%以上の会社であれば赤字でも債務超過でも株式公開できるように登録基準を緩和して開設された。登録基準に準拠して店頭市場を本則市場、第2店頭市場を特則市場と区分されて呼ばれた

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