【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証⑨大学にTLOを設立、産学官連携を推進

2017.03.22

特集

編集部

文部科学省と経済産業省が連携して大学と民間企業が共同(産学連携)で研究開発し、その成果をもとにベンチャー企業(大学発ベンチャー)の創出を狙いとした大学の技術移転機関「TLO設立」に踏み切った。

それまで文部科学省は、国立大学や国立研究所に在籍する研究者を民間企業へ派遣する労働者派遣法の対象業務拡大(1996年)や産学連携による特許権の優先実施権を7年から10年に延長(1997年)するなど、大学の教員に関する規制緩和に取り組んできた。

この大学教員の規制緩和の動きに合わせて通産省は、1998年8月に「研究交流促進法」を改正し、産学共同研究について国有地の廉価使用を許可することを含めた「大学等技術移転促進法」(TLO法=注釈)を施行し、技術移転機関設立に踏みきった。

同法は、国立大学、国立の研究機関等に技術移転会社「TLO」(*注釈)の設立を認め、TLOを通じて大手企業、中堅・中小企業に特許、技術を移転してライセンス収入(ロイヤリティー)や産学共同開発、事業化を図る大学発ベンチャーの創出に打って出た。

TLO設立の許認可は、文部科学省と経済産業省の2省によって実施した。各大学に研究開発の技術移転に関する特定大学技術移転事業の実施計画を文部科学省と経済産業省に提出させて評価し、大臣承認の「承認TLO」と、国及び独立行政法人の研究成果について民間企業に技術移転を行う大臣認定の「認定TLO」の二つに区分して、TLOの承認・認定を行った。

TLOに対する支援措置は、産学連携に対する運営費の交付や補助金交付、技術料の減免、国有施設の無償使用、中小基盤機構による債務保証、技術移転先企業に対する中小投資育成からの出資、特許流通アドバイザーによる特許出願、技術供与の助言など。また、認定TLOに対して特許料、審査請求料を免除した。

特に、助成制度の中で目立つたのが「TLOマッチングファンド」と名付けた大学発事業創出実用化研究開発事業。

通産省は、大学の研究者が研究開発に対してお墨付きを与えて補助する「産業技術研究助成事業」の運営と合わせて同ファンド事業を独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構.(NEDO)に委託・担当させた。

同ファンド事業は、企業がTLOを通じて大学の研究開発資金を提供する場合、提供資金の倍額を上限に助成するもの。

しかし、TLOの仕組みや役割、大学教授などの民間企業での兼業禁止などからTLOの設立(1999年4月時点で8機関設立)は鈍かった。また、民間から大学への資金提供に時間がかかったことからNEDOによるマッチングファンドの運用開始は、2004年度にずれ込んだ。

*注釈

大学等技術移転促進法(TLO法)
TLO法=大学等技術移転法とは、1998年8月に施行された法律。産業活性化・学術進展のため、大学の技術や研究成果を民間企業へ移転する仲介役となる承認TLO(技術移転機関)の活動を国が支援するもの

TLO
TLOとは、Technology Licensing Organization(技術移転機関)の略称。大学の研究者の研究成果を特許化し、それを企業へ技術移転する法人のことで。産と学の「仲介役」を果たす法人組織。大学発の新規産業を生み出し、それにより得られた収益の一部を研究者に戻すことにより研究資金を生み出し、大学の研究の更なる活性化をもたらすという「知的創造サイクル」の原動力として期待されている

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