【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証⑧金の呪縛旋風、全国規模で吹き荒れる

2017.03.17

特集

編集部

VCから投資を受けたベンチャー企業が金の呪縛にあえぎながら経営不振に陥り、遂に倒産の憂き目にあった事例は数多い。

新しい蓄熱材の開発でベンチャー財団やキャピタルから5億円の出資を受けた都内の建築材ベンチャーは、蓄熱材をパネル化して床暖房に製品化のメドを立てるいなや一挙に、千葉県内に自社工場の建設と20名の社員を一挙に新規採用した。しかし、販売が鳴かず飛ばずの状態に陥り、資金繰りが急速に悪化。工場を建設して僅か6ヶ月後に、倒産に追い込まれた。

国の研究開発事業認定を受け、産業整備基金のカタログにモデル企業として紹介された北陸のベンチャーが開発した人工降雪装置も販売面で苦戦を強いられ、いつの間にか姿を消した。

決算報告ソフトを開発して5社のキャピタルから6億円の出資を受けた都内のソフト開発ベンチャーは、販売が計画通り行かずに収益面で苦戦を強いられた。開発したソフトは、商法、証券取引法の改正に合わせて作り替える必要があることや競争相手も同様なソフトを先行販売するなどがネックになり、収益を押し上げるまでには行かなかった。

同社には、出資したVCから送り込まれた役員が予算と実績のかい離、販売見通しと収益向上などについて経営者と面談しながら計数をチェック、出資5年後にVCが経営を管理下に置いた。

こうしたベンチャー経営が頓挫・破綻したケースは、全国レベルで吹き荒れた。中でも、中小・ベンチャー企業経営者が自ら死を選び、死を代償とした悲惨なケースもみられた。

3次元アート事業を展開していた埼玉県内のベンチャー企業は、県内の銀行系キャピタルから出資を受けたが「業績不振を理由にVCが財務担当役員を送り込み、計数管理、経費の使途、出張報告、受注見通しなど細部にわたってチェック。表の看板は、社長。だが、実態は番頭で、自ら起こした会社が他人の会社になってしまった」と自戒を込めて説いた。一週間後に「社長が死去」の訃報が突然飛び込んできた。「社長が壁画を書いている作業中に、約6メ―トルの高さからコンクリート床に落下し、頭を強く打った事が死に繋がった」と社員の弁。飛び降り自殺か、不慮の事故死か、確たる証しはない。が、「疲労困ぱいして仕事どころの騒ぎでなかった」ことだけは伺い知れる。

人間は金が入ると人間性、人格も変わる。VCから2千万円の投資を実現したITベンチャーは、「今にでも株式公開できる」と豪語し王道を歩む勢いにあった。だが、研究開発費が膨らんで1年後に廃業の憂き目にさらされた。

こうしたVCとベンチャーとの金の呪縛を巡る動きは、潜在化してなかなか表面化しない。このため、VCとベンチャーの経営権を巡る争いは、一般的に知る由もない。

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