【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証④政府がお墨付きを与えてベンチャーを創出

2017.03.9

特集

編集部

バブル崩壊による景気後退の転換と国際競争力の強化が産業政策の課題となる中で、店頭市場に創業5年未満のベンチャー企業が株式公開する動きが顕著になると見た通産省・中小企業庁は、店頭市場開設と同時期の1995年に、地域から新規創業(開業)とベンチャー創出を図るため、技術法(1985年施行)の後継法として中小企業支援法の「中小企業創造活動促進法」(中小創造法・注釈)を施行した。

同法は、2005年までの10年間の時限立法で、創造的な事業活動を行う中小企業支援法だ。しかし、我が国においてベンチャー支援を前面に押し出した本格的なベンチャー支援策に位置付けられる。それはまた個別の中小・ベンチャー企業に対して官がお墨付きを与える補助事業であった。

経済産業省、中小企業庁が中小創造法を本格的なベンチャー新興法として施行したのは、それまでの技術法が補助金対象の認定を個別の中小企業より組合中心に認定したため、お墨付き官製ベンチャー輩出の見通しが狂ったこと。また、1990年初頭、不動産、住宅、ネットバブルがはじけて資産価値が下落し、保険、証券、銀行が経営破綻するなど日本経済をベンチャー輩出によって牽引する狙いによる。

この時期から通産省、中小企業庁は、これまでの中小企業政策中心からベンチャーへの金融支援を前面に押し出した技術イノベーションによるベンチャー政策へと大きく舵を切った。

技術法をそのまま引き継いだ中小創造法認定による補助金交付の認定は、新技術・新製品、新サービスの研究開発や事業化を行う中小・ベンチャー企業や創業を計画の起業家、組合団体などを対象に、研究開発等事業計画を作成して都道府県の商工労働部(課)に提出。都道府県は、技術やサービスの新規性と事業の成長性、上場の可能性などを評価して都道府県知事が同法に基づいて個別の企業認定(お墨付き)と補助金交付(開発経費の3分の1ずつを国と県が補助)を認定した。

中小創造法認定企業数と国庫負担による補助金投入額(予算額)は、中小企業庁の調べで1995年度認定件数826件、補助金投入額14億4000万円、1996年度認定件数1350件、補助金投入額20億5500万円にのぼった。

一方、郵政省(現総務省)も1995年からベンチャー対象の先進技術型研究開発助成金制度「テレコムインキュベーション」を始めた。

当時の特殊法人通信放送機構(現独法情報通信研究機構)に交付金を拠出してテレコム、マルチメディアなどの研究開発を行うベンチャーに対して一般枠上限3千万円、産学連携枠上限4千万円、各助成率3分の1を補助するもの。しかし、通産省のベンチャーを対象とした補助制度と何が違うのか、棲み分けがはっきりしないまま補助金制度がスタートした。

1980年代の化粧品を取り巻く環境の中で、トピックス的な動きとして薬事法の改正に伴い厚生省が化粧品工業会に成分表示、使用制限などを内示するようよう要請。また1980年9月に花王がソフィーナコスメティックを設立し化粧品分野に本格参入した。さらに、米レーガン政権下でプラザ合意を契機に円安に為替相場が変動し、国内はバブル経済一色に覆われた。1990年代では、美白化粧品のヒットで美白化粧品ブームに火をつけ市場が過熱化した。

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