【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証⑫国が中小機構を通じてVC組成のファンドに出資

2017.03.31

特集

編集部

金融改革やベンチャー専門の株式市場開設が議論される中、通産省は、1993年3月に新事業創出促進法に基づいて「中小企業総合事業団」(*注釈)がファンド出資事業をできるようにした。
国が同事業団を介して行うファンド事業は、会社設立7年未満の成長初期段階(アーリーステージ)にあるベンチャー企業に対して投資総額の70%以上の投資を行うことを規定した「ベンチャーファンド」事業。国策に沿って、大学発ベンチャーやバイオベンチャーに的を当てて投資促進を図った。

民間VCが無限責任組合員となって設立・運営する「投資事業有限責任組合」に国が中小企業総合事業団を介して総ファンド額の二分の一を限度に有限責任組合員として出資できるようにしたのが特徴。
投資の回収は、投資先のベンチャー企業が株式公開に伴って、株価収益を配分する中から出資額に応じて受け取る仕組み。
国がベンチャー投資の看板を掲げVCファンドに出資額の上限を決めて出資し、投資回収するファンド出資事業を始めたのは、VCが組成するファンドに国が出資することで、VCのファンド組成をしやすくすること。また、ベンチャーへの直接金融に勢いを付けることが狙い。

同事業団のファンド出資金の原資は国が一般会計や特別会計で予算化し、同事業団に運営交付金として拠出した拠出金。毎年、同事業団が高度化資金融資に伴う利子収入と合わせて資本金に繰り入れ、出資金として振り向ける。
同事業団は、ベンチャーファンド事業開始以降、地域密着や産学連携、第二創業などに取り組む中小企業を対象とした新たな中小企業ファンドの組成を画策するなど、官製ファンド事業の本格的な幕開けとなった。

*注釈

独立行政法人中小企業総合事業団(現中小企業基盤整備機構・中小機構)のファンド事業は、1999年3月に経済産業省がファンド法を改正して中小企業、ベンチャー企業のリスクマネーを供給する狙いで行ったもの。1998年度から国策に沿ってファンド出資事業として「ベンチャーファンド」「中小企業再生ファンド」「がんばれ中小企業ファンド」「事業継続ファンド」「地域中小企業応援ファンド」の5ファンドを(表参照)順次、立ち上げた。
国のファンド政策に準拠して民間のVCがファンドを組成するために、組成ファンド総額の半分を出資して民間VCのファンド組成をしやすくした。同時に、投資組合(無限責任組合員)に同事業団が有限責任組合員として出資した。だが、個別の政策ニーズごとに細分化されたファンドの区分やベンチャー、中小企業向け投資比率の硬直性が指摘され、多様化した資金ニーズに応えるファンド組成に対し、十分に対応できない問題点も指摘されるなど荒海の航海となった。

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