【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証⑲地域での技術革新・資源活用等のクラスタ―研究開発に補助

2017.04.17

特集

編集部

日本の対米貿易の黒字化でジャパンバッシングが激しくなり、その批判を緩和する目的で通産省は、2001年4月、地域に産学官が共同で取り組む産業集積や技術集積地を意味する「クラスター計画」(*注釈)による補助事業を始めた。
3期にわたって行うクラスター形成事業は、1期が「立ち上げ期間」として2001年から2005年までの5年間を、クラスター集積地と推進機関の承認・認定。2期が「成長期」と位置付けて2006年から2010年までの5年間に新製品の製造、販売件数を4万件創出する目標を立てて推進。3期は「クラスターの成長期」と位置付けて2011年から2020年の10年間にわたる計画期間を設定した。同時に、通産省の地方出先機関が中心となり、かつてテクノポリス法や頭脳立地法で定めた地域をクラスター地域として指定し、大学を拠点とした技術集積地を形成しながら、産学官による研究開発プロジェクトを推進する事にした。2009年度は、18のプロジェクトを行った。

国は、産業クラスターを全国で推進するため、委託金を拠出して地域にクラスター推進の中核機関(科学技術関係財団)を設立。
同中核機関に対して、産学官が参画した地域クラスター推進協議会設立の旗振り役をさせた。さらに、産学官が共同で取り組む新技術、新製品開発、事業化などのプロジェクトについて国が評価・認定した上で「地域イノベーション創出研究開発事業」「地域資源活用型研究開発事業」などの補助事業を設け、産業クラスターの推進を図った。

通産省のクラスター計画開始と歩調を合わせる形で、地域クラスターのトップを切って「社団法人首都圏産業活性化協会」(通称:TAMA協会)が旗揚げし
①プロジェクト推進組織・拠点組織の事業支援
②地域の特性を活かした実用化技術開発の支援
③起業家育成施設の整備等インキュベーション機能の強化
④商社等との連携による販路開拓支援
⑤地方銀行、信用金庫等金融機関との連携、などに取り組んだ。
一方、文科省も2001年3月に閣議決定された第2期科学技術基本計画において地域における「知的集積地=知的クラスター形成」の促進が位置付けられ、2002年度から知的クラスター計画の取り組みを始めた。

知的クラスターの形成は、地域のイニシアティブの下で、地域において独自の研究開発テーマとポテンシャルを有する大学をはじめとした公的研究機関等を核とし、地域内外から企業等も参画して構成される技術革新システム。
群れや集団を意味するクラスター計画は、表の看板だけを見る限り一見、目新しい印象を受ける。しかし、これまで政策として打ち出し、推進してきた地域から新事業を創出するため、47都道府県と11政令指定都市を対象に設立した中核支援機関による産学連携の推進やSBIR制度の導入による大学TLOの活性化、大学の技術シーズの民間移転、大学からのベンチャー創出などを含む、従来の補助金制度と何ら変わりがないとの不評を受けた。

2001年当時の化粧品業界のエポックメーキングな動きとして、牛の海綿状脳症(BSE)発生と感染拡大に伴い、牛由来原料の化粧品について厚労省が回収命令を出すなど混乱に陥った。

*注釈

クラスタ-計画
2001年から経済産業省と文部科学省が進めてきた産業クラスターと知的クラスターによる地域経済の活性とベンチャーの輩出を狙った地域創生策。産業クラスターは2009年度に終了し、全国イノベーション推進機関ネットワークに受け継がれた

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