【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証⑳ベンチャーに出資するベンチャー財団、雲散霧消

2017.04.19

特集

編集部

2000年後半に企業倒産による負債総額が24兆円と過去最高を記録するとともに中央省庁が1府12省庁に再編される中で、国の高度化資金を原資に地方自治体等が設立(1996年)したベンチャー財団(*注釈)が相次いで廃止された。
1996年から全国に設立した44のベンチャー財団の内、3財団が撤退、30のベンチャー財団が投資規模を縮小する事態に追い込まれ雲散霧消の状況に陥った。
ベンチャー財団が投資事業の廃止・撤退を余儀なくされたのは
①中小創造法認定の企業を前提とした投資に限定されたこと
②ベンチャー財団が役所出身の寄り合い世帯で構成され、投資ノウハウに欠けていたこと
③投資先企業の破綻が相次いだこと
④投資先企業が破綻した場合、VCは3割の自己負担で済み、損失補填された資金の範囲内でしか投資を行わないこと
⑤投資先企業の倒産リスクを基金運用益で賄ったため効率が悪いこと
⑥ベンチャー財団の準備金不足など、複合的な要因による。

こうしたベンチャー財団の凋落で通産省・中小企業庁は、ベンチャー財団への無利子融資の廃止(2003年度末)に続き、ベンチャー財団の投資終了(2004年度)に追い込まれて行くことになる。
同財団が設立された1996年4月から2002年3月末までの累積投資件数は、657件、269億6400万円にのぼる。同時に、単年度で見ると直接・間接投資合わせて投資件数と投資額が高かったのは、ベンチャー財団の設立がそれまでの5財団から一挙に35財団に増えた1997年度で投資件数157件、投資額70億6500万円にのぼった。しかし、1998年度には、株価の低迷と投資一巡で投資件数85件、投資金額34億8000万円に減少。1999年度に世界的なITブームで株価が上昇したが投資件数、投資額とも98年度とほぼ横ばいで推移。2000年度には、76件、32億3000万円に低落した。
単年度別の投資件数と投資額は、ベンチャー財団が設立された1995年度投資件数2件、投資金額3億6000万円、1996年度同135件、同67億9000万円、1997年度同157件、同70億6000万円、1998年度同85件、同34億8000万円、1999年度同84件、同37億7000万円、2000年度同76件、同33億3000万円となった。

このような凋落傾向を辿るベンチャー財団に対して国が一般会計から出資した出資額は、1995年度120億円、1997年度90億円にのぼる。また、国が中小企業事業団を介して自治体とベンチャー財団に無利子で融資した累積融資額は、2001年度末で846億円に達した。
ベンチャー財団が投資の主力対象とした中小創造法の認定企業件数と国が一般会計から支出し、認定企業に研究開発補助金として交付した補助金総額(予算額)の推移(1995年度から2000年度の6年間)は、1995年度認定件数826件、補助金総額14億4100万円、1996年度同1305件、同20億5500万円、1997年度同1237件、同26億5000万円、1998年度同1467件、同28億8400万円、1999年度同1543件、同26億7600万円、2000年度同1554件、同24億5300万円となっている。
中小創造法の認定件数と補助金総額は、1999年度をピークに中小創造法が廃止される2005年度まで減少傾向を辿って行く。

*注釈

ベンチャー財団
ベンチャー企業への出資による創業支援を目的に地域の金融機関、自治体等が主体となって設立した。ベンチャー財団が民間VCに対して審査の上、低利で資金を預託し、個々のベンチャー企業に出資する。民間VCへの預託には、同財団が中小企業総合事業団から自治体経由で借り入れた無利子の資金が充てられた。しかし、財団の活動が尻つぼみになったのは、同財団の担当者の多くが自治体の出向者で占められ、個別案件の審査ノウハウが蓄積されなかったことが大きい

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