【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証㉗ベンチャーから中小企業に政策の舵を切る

2017.05.17

特集

編集部

2005年4月に中小創造法(1995年4月施行)と新事業創出促進法(1999年2月施行)、経営革新支援法(1999年7月施行)の三法を統合して「中小企業新事業活動促進法」を制定した。

それまで三法ごとに行ってきた「新製品・新技術、新サービスなどの研究開発補助金制度は、重複していて分かりづらい」との批判に応えて中小創造法の時限立法(10年)が切れる2005年に合わせて統合した。また、同促進法の施行に伴い経済産業省は「これまでのベンチャー政策から中小企業政策に力を入れると」して政策の転換を強調した。しかし、同法に基づく中小企業への支援内容は、旧三法で行ってきた創業支援、経営革新支援、新連携支援をそのまま当てはめるなど、看板の付け替えに過ぎなかった。

新法による金融支援制度は、政府系金融機関の低利融資、設備投資減税、保証協会の債務保証枠の拡充、政府系VCの中小投資育成からの投資、中小基盤機構のVC組成の出資などお決まりのメニュー。また、同法の条文に新連携支援を盛り込んだとはいえ、これまでの産学連携制度と変わりがなかった。しかも、支援と言う名で中小機構や公益法人に金と仕事を与えて、新連携補助金制度を推進する官益の構図は変わることがない。

新連携支援体制は、経済産業省の地方出先機関である九州経済産業局に新連携事業を地域で支援する目的で、地域戦略会議を設置。各経産局が中小機構に委託して、中小機構が九州経済産業局に合わせて設置した支部に戦略会議事務局を設置。戦略会議事務局の傘下に事業評価委員会とプロジェクトマネージャ―(PM)とサブマネージャー(SM)を配置。さらに、SMの傘下に個別支援チームを編成して支援する体制を敷いた。

このような体制のもと、市場化を見据えた案件を国と支援機関が発掘して連携体を構築する際に必要な経費の補助(連携体構築補助金)と市場化に必要な経費を補助(市場化支援補助金)する二補助金制度を設けた。いわば経済産業省が中小機構に委託して、同機構の支部に事務局とスタッフを配置して連携体の構築などについて指導し、事業計画に磨きをかけた上で経済産業局に補助金の申請を行い、認定する構図。

新連携補助事業の認定件数は、2005年9月69件、10月101件に上った。この中小企業新事業活動促進法同法の施行を機にベンチャー政策は、影を潜め中小企業支援に軸足を置いた補助金バラマキに舵を切った。

これにより中小企業の研究開発補助制度は、既存事業に加えて新たな製品、サービスを開発して新規事業に進出し、付加価値の向上を図って経営を行う経営革新計画補助事業、異分野の企業、大学などが連携して新事業に取り組む新連携補助事業、農業の六次産業化による国際化への対応を狙いとした農業、商業、工業が連携して新商品、新サービス開発に取り組む農商工連携補助事業(*注釈)の三補助金制度となった。

*注釈

農商工連携補助事業
6次産業の推進を目的に、第一次産業の農業・漁業と第二次産業の商業、第三次産業の工業分野の異業種が連携を組んで新技術、新製品、新サービスを開発について事業計画を審査して認定し、経費の3分の2を補助する制度

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