【連載】創業100年・老舗化粧品会社の研究①伊勢半グループ(下) ~産業遺産紅ミュージアム、修学旅行団体も見学~

2017.05.24

特集

編集部

伊勢半グループの老舗を象徴するのが、紅花を原料とした手つくりの紅「小町紅」(写真)の製法と紅の伝統文化を後世へ引き継ぐための企業博物館「紅ミュージアム」の開設と運用に見られる。

日本では古来、口紅といえば紅花から作られる「紅(べに)」を指す。伊勢半本店では、文政8年(1825)の創業以来、日本の伝統的な「紅」を当時の製法そのままに作り続けている。

紅の製法は
①紅花の花弁を摘み取り黄色い色素を洗い流してから日陰で朝・昼・晩と水を打ちながら発酵させ、花弁の赤味を出す
②発酵した花弁を臼に入れてつき、いったん団子状に丸めてから煎餅状に潰し天日干しして紅餅を完成させる
③紅餅を水に浸けアルカリ溶液と酸液を加えて紅液を作る
④紅液に「ゾク」と呼ばれる麻の束を浸し、赤色色素を染め付ける。染め付けたゾクを搾り、赤色色素を取り出す
⑤羽二重の上に残った泥状の紅を集め、紅箱に入れて保管する
⑥自然乾燥させて小町紅を完成させる

紅花から抽出した自然の「赤」を玉虫色に輝く「小町紅」にまで昇華させた匠の「技」は、紅匠(紅職人)によって今日に受け継がれている。

こうした紅の歴史と文化、紅作りの「技」を伝えるために産業遺産として開設したのが紅ミュージアム(写真=ミュージアム内部の展示物)である。
同ミュージアムは、紅の歴史的背景や諸相を紹介する資料室と紅の色彩的な魅力を体験できるサロンとによる2つのゾーンから構成されている。

同ミュージアムの開設は、2003年8月に東京都の江戸開府400年の記念行事(1月~12月)に伊勢半が協力事業として参加したのが契機。千代田区神田神保町に「紅資料館」を開館し、来館者に小町紅(本紅)で化粧を施すなどして好評を博したことを受けて、2000年3月に本紅を日本の伝統文化と位置づけ、紅の歴史、文化を紹介する「伊勢半本店紅資料館」を港区南青山にオープンさせた。

2006年8月には「伊勢半本店 紅ミュージアム」に名称を変更し、資料展示のみならず、江戸化粧文化などのイベントなどを活発に行っている。
ここへきて修学旅行の団体客も訪れるなど観光スポットとして注目を集めている。入場料は無料。

#

↑