【連載】医薬・創薬企業の化粧品事業⑬糖質科学研究所(上) ~肌への浸透性が高いヒアルロン酸を化粧品に応用~

2017.07.4

特集

編集部

医薬ベンチャーの株式会社糖質科学研究所(東京都文京区)は、2005年4月にヒアルロン酸・グリコサミノグリカンという生体内物質「糖鎖」を医薬品、化粧品等に応用開発する目的で設立した。特に、同研究所が創薬開発のための要諦として研究開発に取り組んだのが、超低分子ヒアルロン酸「HA4」(ナノレベルヒアルロン酸)である。

 ヒアルロン酸HA4は、グルコサミンとグルクロン酸が結合した2糖を基本単位とする直鎖状の多糖で、ヒトの体内にも存在する生体分子。大きさが一般的なヒアルロン酸の約10万分の1。分子量も最低分子量に近く、これ以上小さなヒアルロン酸は生体内に存在しない。
同社は、肌への浸透性が高く保湿や保水に必要なヒアルロン酸を肌に導く手助けをすることを実験データ等で解明した(HA4含量データ図参照)。

こうしたヒアルロン酸の研究開発に取り組む中で同社は、2007年7月 に資生堂との間で資本業務提携に関する契約を交わした。
契約内容は、糖質科学の技術を活用して資生堂が分子量の少ない低分子ヒアルロン酸を生産・販売する。また、低分子ヒアルロン酸は、従来のヒアルロン酸に比べて皮膚の炎症やアレルギーの原因となる過剰な免疫を抑える機能があり、化粧品、医薬品などに応用展開を図るというもの。

資生堂は、1985年に初めて発酵法により高分子領域のHA量産技術を確立し、HA事業に参入した。資生堂が糖質科学と提携したのは、「独自に技術開発を進めるより、糖質科学と組む方が迅速に商品化できる」と判断したため。以降、現在では、高分子HAの高い水分保持機能を応用して化粧品や食品に配合しているほか医療用医薬品にも応用し、眼科手術補助剤や関節機能改善剤などを開発している。

一方、糖質科学は、資金調達として2006年4月にVCなど7社から3億5000万円の資金調達を行ったのに続き、資生堂との資本業務提携に伴い、糖質科学の第3者割当増資1億5000万円を全額引き受けている。

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