化粧品業界、CVC設立とベンチャー青田買い低空飛行化粧品業界、CVC設立とベンチャー青田買い低空飛行① ~オープンイノベーションの活性化狙う~

2017.08.21

特集

編集部

日本企業は、グローバル化の進展や市場の成熟などに伴い、製品のライフサイクルの短命化、IT化による商品、サービスのコモディティ化(差別化)がなくなるなど激しい環境変化への対応が求められている。

そうしたなか、国内企業の多くが自社だけの経営資源のみに頼らず、外部などから技術やアイデアを取り込むことで、新しい価値を生み出す「オープンイノベーション」に賭ける期待が一挙にた高まってきた。とりわけ大手企業の間には、新技術・新製品の開発に際して組織の枠組みを越え、広く知識・技術の結集を図るオープンイノベーションを推進するための専門部署「コーポレートベンチャーキャピタル」(CVC)を社内に設置して多様な技術を持つベンチャー企業を青田買いする動きが鮮明になってきた。

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)とは、業種を問わず大手企業が自己資金によって自ら投資活動を行うための機能を持つ組織を指す。 最近は、テクノロジー関連のスタートアップに対する投資を行うCVCが次々と設立され、ベンチャー企業の青田買いに打って出ているのが特徴。これまで事業拡大のために履行してきたM&Aや研究開発予算の一部をベンチャー企業が保有する技術活用に充て、オープンイノベーションの一手段としてCVCファンドを設立する動きが増加している。

株などで儲けた余剰資金を投資家から集めてキャピタルゲインを狙う金融・保険・証券系列のべンチャーキャピタル(VC)と異なり、CVCは本業との事業シナジーを求めて運営されるケースが多い。

ここへきて大手企業が社内にCVC組織を設けてベンチャーを青田買いしている理由は
①有望ベンチャーへの早期コンタクトを図り将来性のある新技術、製品、アイデアについて早期に接点を持つことができること
②ベンチャー企業が研究開発等を推進するため、大企業は低リスクでイノベーションに着手できる。また、他のVC等のリスクマネーをベンチャーが取り込むことで、自社単独で研究開発等を行うより投資資金を抑えることができるなど新規事業の立上げ・新市場への参入リスクを低減できること
③社内外からのメッセージ機能や情報が集まりやすくなるなどによる。

CVC設立には2つのパターンがある。1つは、事業会社が自社の子会社としてジェネラルパートナー(無限責任組合員、以下「GP」という)を作り、自社本体がリミテッドパートナー(有限責任組合員、以下「LP」という)として出資するパターン。
もう1つは、第三者(VC等)をGPとして指名し、自社はLPとして参画する二人組合形式がある。

前者の第1のパターンは、自社の価値観をCVCの投資判断に反映させ易く、自社の取り込みたい技術や投資対象がかなり明確な場合に有効な手段。但し、投資先の発掘や投資判断が近視眼的になりやすいという問題がある。また、前者は、ベンチャー企業の発掘、投資、売却、ファンド管理等、一連のVC業務を自社子会社内で行う必要があるため、社内外からリソースを調達する必要がでてくる。

後者の第2のパターンは、委託するVC等の情報網や知見等を活用できるため、現状シナジーが見込めなくても第三者の新鮮な視点から広く情報収集したい場合に効果的。後者は、指名したGPに周辺業務を委託し、自社は投資対象との事業シナジーの追求に集中でき、投資意思決定も迅速化できる。

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