化粧品業界、CVC設立とベンチャー青田買い低空飛行化粧品業界、CVC設立とベンチャー青田買い低空飛行② ~CVC設立とベンチャーの青田買い化粧品各社に危機感無し~

2017.08.22

特集

編集部

ここへきて大手企業が社内にCVC組織を設けてベンチャーを青田買いしている理由は
①有望ベンチャーへの早期コンタクトを図り将来性のある新技術、製品、アイデアについて早期に接点を持つことができること
②ベンチャー企業が研究開発等を推進するため、大企業は低リスクでイノベーションに着手できること。また、他のVC等のリスクマネーをベンチャーが取り込むことで、自社単独で研究開発等を行うより投資資金を抑えることができるなど新規事業の立上げ・新市場への参入リスクを低減できること
③社内外からのメッセージ機能や情報が集まりやすくなるなどによる。
CVC設立には2つのパターンがある。1つは、事業会社が自社の子会社としてジェネラルパートナー(無限責任組合員、以下「GP」という)を作り、自社本体がリミテッドパートナー(有限責任組合員、以下「LP」という)として出資するパターン。
もう1つは、第三者(VC等)をGPとして指名し、自社はLPとして参画する二人組合形式がある。
前者の第1のパターンは、自社の価値観をCVCの投資判断に反映させ易く、自社の取り込みたい技術や投資対象がかなり明確な場合に有効な手段。但し、投資先の発掘や投資判断が近視眼的になりやすいという問題がある。また、前者は、ベンチャー企業の発掘、投資、売却、ファンド管理等、一連のVC業務を自社子会社内で行う必要があるため、社内外からリソースを調達する必要がでてくる。
後者の第2のパターンは、委託するVC等の情報網や知見等を活用できるため、現状シナジーが見込めなくても第三者の新鮮な視点から広く情報収集したい場合に効果的。後者は、指名したGPに周辺業務を委託し、自社は投資対象との事業シナジーの追求に集中でき、投資意思決定も迅速化できる。

国内では2000年代のベンチャーブーム時に、大手電機メーカーを中心にCVCファンド設立の動きが拡がりをみせた。以降、2012年頃から再びCVCファンドの設立が活発化している。
最近では、CVC設立についてメディア企業や製造業、サービス業など業種を問わずに拡大している点が特徴。
大手企業が2012年から2017年の5年間で設立したCVC件数は、約50件に上ると見られている。
しかし、化粧品業界に限ってみると、資生堂やマンダムを除いてCVC設立によるベンチャーを青田買いする投資活動は見るべき姿がない。
このことは、化粧品業界の保守的な構造と相まって、「ベンチャーの手を借りないでも自らの技術で事業を対応できる」との自負とそれにも増して「国内の化粧品市場が極端に落ち込むことはなく一定の需要が引き続き見込める」として経営を革新する切迫感に欠けることに起因する。

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