【特別企画】大手各社の化粧品事業戦略に迫る[9] アルビオン、今秋にナノキャリアと共同開発の化粧液投入

2013.07.19

特集

編集部

アルビオン、今秋にナノキャリアと共同開発の化粧液投入

アルビオンは、コーセーの創業者・小林孝三郎氏が1956年に消費者の感性に訴える高級ブランド化粧品専門メーカーとして創業したのが始まり。同社の創業目的であるブランドの浸透による高級路線を展開するため、1986年、87年にかけて、フランスのエレガンス社やソニア・リキエル社と相次いで提携。最近では、仏ラデュレ社と提携(2012年1月)し、1号店を都内百貨店にオープンした。

現在、海外の販売網は、米国、香港などに関係会社4社と中国、台湾、ロシア、シンガポールに代理店を設置して海外事業を展開。2013年3月期は、海外事業が前期比35.4%増と大幅に売り上げを伸ばした。

国内は、同業他社がコンビニ、ドラッグストア、ネット通販など複数のチャネルで販売しているのとは好対照に百貨店と化粧品専門店中心に対面(カウンセリング)販売している。

2013年3月末現在、国内の取引先は、百貨店64店、化粧品専門店1,551店を数える。この中で、年商1億円アルビオンの売り上げを達成した計画店は、44店にのぼる。同社の今期(2014年3月期)売上高計画は、前期(442億円)比約10億増の452億円を見込む。

この売上げ目標を達成するため、顧客目線での接客対応や製品が顧客の目に入る目立つ店舗コーナー作りを行い、ブランドの浸透とファン拡大を図り収益の向上に繋げる。

新製品の販売にも乗り出す。バイオ創薬ベンチャーのナノキャリア(マザーズ上場)と業務提携(2012年7月)し、新たに創成した新美容液「エクラフチュール」(商品名)を今年秋に市場投入する。

共同開発した美容液は、ナノキャリアが保有する親水性と疎水性の2層構造を有する直径数10ナノ㍍の高分子「ミセル化ナノ粒子」を形成する技術を応用し、同社が新成分を配合して商品化に繋げた。

ミセル化ナノ粒子は、水に溶けやすい性質を示すポリエチレングリコールから成る親水性ポリマーと、水に溶けにくい性質を示すポリアミノ酸からなる疎水性ポリマーを一つの分子として結合させたブロックポリマー(共重合体)がベースとなっている。

ブロックポリマーを水中でかき混ぜると、外側が親水性ポリマーで内側が疎水性ポリマーという2層構造を有する20~100ナノメートルサイズの球状の粒子(ミセル)を形成する。この粒子の内部(ポリアミノ酸部分)に薬物を封入したものがミセル化ナノ粒子。この特性を美容液に応用し、肌により浸透させることを狙って開発した。

同社では、新製品の美容液について「既存のスキンケアシリーズには属さない特化型アイテムとして位置付けている。幅広い顧客との出会いを創出していきたい」として新製品に賭ける期待は大きい。

 

外部の技術ソース活用、研究開発者による安全性テスト実践

取締役カスタマーサービス本部 副本部長兼研究部長・染谷高士氏

染谷部長お顔写真

 ―まず研究開発体制から伺いたい

「商品企画やアイデアを商品化するための研究揮発を行う東日本橋研究所と化粧品の美容効果検証や美容機器の研究開発などを行なう白金研究室、それに植物に特化した原料開発や基礎研究を行なう秋田・白神研究所の3研究体制を敷いています。3研究所合わせた総研究開発人員は40名で、商品の市場投入計画に合わせて開発のスピードアップと効率化に取り組んでいます。」

 ―産学連携の取り組みは

「外部の技術ソースを積極的に活用するとの方針から今年4月に東京農業大学と植物成分の実用化を目的に包括連携協定を結びました。同大の食品香粧学科と2011年にヨモギの成分と機能性に関する共同研究を始めたことを契機に連携協定に発展したもので、今後、白神研究所で栽培されたヨモギの有効成分の研究を行い商品開発に繋げる考えです。また、今年5月にお茶の水女子大学に化粧品や医薬品の新規成分を探索する目的で寄附研究部門を開設しました。」

 ―ベンチャーとの共同開発の成果も見られますね

「ナノキャリアのコア技術ミセル化ナノ粒子(高分子ミセル)は、ナノサイズの粒子に薬を入れて体内に投与し、そのナノカプセルが病変部まで薬を運び、そこで薬物を放出させるというもので、薬物送達システム(ドラッグデリバリーシステム)と呼ばれる手法。ミセル化ナノ粒子技術の特性を化粧品開発に応用することを目的に提携したもので、今までにない美容液を生み出すことを実現しました。」

 ―商品のブランド力は、商品に裏付けされた品質・信頼性保証が一体となっていることが重要です。消費者に対する化粧品の安全・安心への取り組みをどの様に進めていますか

「製品出荷4ヵ月前に研究開発に携わった研究開発者による使用テストを実施するとともに、世界各国の安全性保証ガイドラインや法規制など独自の安全性基準を設けて原料、処方、製品の3段階で安全性のチェックを徹底しています。また、美容部員から上がって来る顧客からのクレームについても月1回開く部長会で、徹底的な分析評価を行い、開発に反映させるとともに美容部員にもフィードバッグするなど会社全体で情報の共有化を図っています。」

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